広域機関は、発電事業者等と供給力提供の具体的な方法を取り決めます。これを「リクワイアメント」といいます。
リクワイアメントの達成状況は、事後に評価(アセスメント)され、評価結果によっては、ペナルティが課せられることがあることから、容量市場に参入した発電事業者等にとって、リクワイアメント・アセスメント・ペナルティを正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、容量市場のリクワイアメントのうち、計画停止調整・余力活用に関する契約の締結について、わかりやすく解説します。
リクワイアメント・アセスメント・ペナルティの全体像
広域機関は、発電事業者等とオークションで落札された応札単位毎の電源等と容量確保契約書を締結します。
容量確保契約では、実需給期間における供給力提供の具体的な方法(リクワイアメント)を取り決めます。
リクワイアメントは、電源区分、実需給期間の開始前後や需給状況によって異なり、リクワイアメント毎にアセスメント(リクワイアメント達成状況の確認)やリクワイアメント未達成時のペナルティが存在します。
広域機関は、リクワイアメントの達成状況をアセスメント(評価)し、達成状況に応じて容量提供事業者に容量確保契約金額を交付します。リクワイアメント未達成の場合は、経済的ペナルティとして、容量提供事業者へ交付する容量確保契約金額の減額や請求を行います。
リクワイアメントの一覧は、以下の表のとおりです。
また、オークション参加対象となる電源等の概要は以下の表のとおりです。変動電源は、自身での出力調整ができない自然変動電源のことで、単独で応札するものと組み合わせて(アグリゲート)応札するもので区分しています。
以降では、リクワイアメントのひとつひとつについて、詳しく見ていきましょう。
① ⑦計画停止調整(安定電源・変動電源(単独))
「①⑦計画停止調整」のリクワイアメントは、「広域機関または一般送配電事業者が実需給年度2年前に実施する容量停止計画の調整依頼に応じること」とされており、定期補修・中間補修等の容量停止計画を実需給年度2年度前に調整することで、各エリア・各月の供給信頼度を確保することを目的としています。
対象となる電源は、安定電源、変動電源(単独)です。
リクワイアメントには、「①⑦計画停止調整」と「③⑧⑨計画停止」という、似た項目が存在していますが、これらは実施する時間軸が大きく異なり、「①⑦計画停止調整」は、実需給年度の2年前の作業、「③⑧⑨計画停止」は、実需給年度の直前~実需給の作業となります。
容量停止計画の対象となる作業
計画停止調整の対象となる作業は以下のとおりです。供給計画に提出するような定期補修や系統設備の作業に伴う停止等、比較的大きな作業が対象となっています。
※1 事故※3や運用による供給力の減少、燃料制約等に起因する出力停止等は、実需給年度2年度前に行う容量停止
計画の調整業務の対象外となります。一方で、実需給期間中の出力停止等は、実需給期間中の計画停止のリクワイアメントの対象となります。
※2 高圧及び低圧等の流通設備作業は本業務の対象外となります。
※3 事故等の電源トラブルにより長期停止が必要となり、実需給年度に出力低下する場合は調整業務の対象となります。
容量停止計画の提出期限
容量停止計画の提出期限は、長期固定電源(原子力、水力、地熱)とそれ以外で期限が異なっています。以下は、2023年度に実施した際の期限です。
長期固定電源 | 7月末 | 長期固定電源 (原子力、水力(揚水式を除く)又は地熱) 流通設備作業に同調を求める長期固定電源 |
長期固定電源以外の電源 | 10月末 | 上記で容量停止計画を提出していない長期固定電源 長期固定電源以外の全ての対象電源 |
なお、容量停止計画は、容量市場システムへの提出・登録が必要です。
容量停止計画の調整手続きとペナルティ
広域機関は、容量停止計画をもとに、各エリアの供給信頼度の評価を行い、供給信頼度の基準を満たしていないエリアや対象月等を提示します。
容量提供事業者は、その結果をもとに、容量停止計画の調整を行う必要があります。
STEP1~STEP4にかけて調整が行われ、最終的に供給信頼度の基準を満たしていないエリア・対象月の調整に応じることができなかった電源は、調整不調電源として、経済的ペナルティの対象となり、容量確保契約金額が減額されます。
調整に応じることのできないやむを得ない理由がある場合は、広域機関で確認し、経済的ペナルティの対象とならない場合もあります。
②余力活用に関する契約の締結(安定電源)
調整機能「有」と登録した電源のみ、一般送配電事業者と余力活用に関する契約を締結することが、リクワイアメントとされています。調整電源「有」とは、需給調整市場における商品の要件を満たす機能の有無のことであり、本契約の対象は、大手電力会社の電源が大半を占めると思われます。
2023年度までは、電源Ⅱとして一般送配電事業者が公募調達していた電源は、小売電気事業等が利用していない余力を調整力として活用することができました。
2024年度以降は、容量市場で調整機能「有」とした電源が一般送配電事業者と余力活用に関する契約を締結し、、これまでの電源Ⅱの代わりとして調整力として活用されます。
以下は、余力活用に関する送配電網協議会での説明文です。
余力活用に関する契約の概要と申込
容量提供事業者は、容量市場で落札された調整機能を有する電源について、余力活用に関する契約を一般送配電事業者と締結する必要があります。
余力活用に関する契約とは、一般送配電事業者がゲートクローズ後に周波数制御・需給バランス調整・系統運用等を実施する際に、ゲートクローズ前の発電事業者等の計画策定に支障を与えないことを前提に余力を活用することで、社会コストの低減等、より効率的・安定的な需給調整、系統運用を期待する為の契約になります。
余力活用に関する契約を締結いただいた容量提供事業者は、一般送配電事業者からの指令に応じてゲートクローズ後の上げ余力・下げ余力を調整力として提供していただきます。
容量提供事業者は、一般送配電事業者からの指令に応じて調整力を提供した場合、一般送配電事業者との間でkWh精算をしていただきます。
出典:送配電網協議会 余力活用に関する契約の概要と申し込み
なお、余力活用に関する契約については、ΔkWに関する精算はありません。
まとめ
広域機関は、発電事業者等と供給力提供の具体的な方法を取り決めます。これを「リクワイアメント」といいます。
リクワイアメントの達成状況は、事後に評価(アセスメント)され、評価結果によっては、ペナルティが課せられることがあることから、容量市場に参入した発電事業者等にとって、リクワイアメント・アセスメント・ペナルティを正しく理解しておくことは重要となります。
リクワイアメントは、電源区分毎や時間軸(実需給前、中)によって11項目に区分されています。
「計画停止調整」のリクワイアメントは、「本機関または一般送配電事業者が実需給年度2年前に実施する容量停止計画の調整依頼に応じること」とされており、定期補修・中間補修等の容量停止計画を実需給年度2年度前に調整することで、各エリア・各月の供給信頼度を確保することを目的としています。
供給信頼度のが確保されないエリアや月に容量停止計画を提出していた場合は、調整不調電源として、経済的ペナルティの対象となる場合があります。
余力活用に関する契約の締結については、一般送配電事業者の調整力となる調整機能「有」の電源が計画するもので、太宗は大手電力会社の電源が占めると想定されます。
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