広域機関は、2020年度より、将来の供給力(kW)を確保する仕組みとして「容量市場」を開設しました。
ここでは、容量市場のオークションから実需給期間までの全体スケジュールについて、わかりやすく解説します
全体スケジュール
広域機関は、容量市場により、実需給期間の4年前に全国で必要な供給力を一括して確保します。
下記は、容量市場の関係者である「広域機関」「発電事業者等」「小売電気事業者」についての4年前~実需給期間までのスケジュールです。
4年前(メインオークション)
メインオークションの開催
容量市場は、買い手は広域機関、売り手は発電事業者等となる、シングルプライスオークションです。
オークションの参加対象となる電源は、「安定電源」「変動電源(単独)」「変動電源(アグリゲート)」「発電指令電源」に区分され、それぞれに要件が設定されています。
広域機関は、全国で必要な供給力等に基づき、目標調達量を定め、需要曲線(買い入札曲線)を設定します。
それに対し、発電事業者等は、応札単位ごとに、応札容量(kW)、応札価格(円/kW)を決めて、応札します。
応札電源を安い順に並べた供給曲線(図のG1,G2・・・)と需要曲線(赤線)の交点が約定価格となり、約定価格以下の電源が落札電源となります。
シングルプライスオークションですので、全ての落札電源には、応札価格によらず約定価格が適用されます。
2026年度向けの応札受付は、2022年11月1日~11月15日に実施され、2023年1月に約定結果が公表されました。
容量確保契約の締結
電源を落札した事業者は、約定結果公表後、広域機関と「容量確保契約書」を締結します。
容量確保契約では、実需給期間における供給力提供の具体的な方法(以下、リクワイアメント)を取り決めます。
2年前(実効性テスト・容量停止計画の調整)
実効性テスト
発動指令電源は、実需給期間において、年間で最大12回(1回あたり3時間継続)の発動指令に応じる必要があります。
それに先立ち、実需給年度の2年度前の夏季(7〜9月)または冬季(12〜2月)に、発動指令電源に対して「実効性テスト」が実施され、容量確保契約容量以上の供給力を提供できることを証明する必要があります。
容量停止計画の調整
容量提供事業者は、実需給年度の2年前に、容量停止計画を広域機関に提出します。
容量停止計画とは「電源等の維持・運営に必要な作業」及び、「その他の要因に伴い電源等が停止又は出力低下する計画」です。
広域機関では、提出された容量停止計画を元に、月単位で供給信頼度評価を実施し、電源の調整を行います。
広域機関が指定したエリアおよび対象月において、容量停止計画を提出している容量提供事業者には、対象月以外への調整が依頼されます。
依頼に応じることができない場合は、経済的ペナルティが科される場合があります。
容量停止計画を元に、供給力の少ない月は、停止を他の月に移動する等、停止調整を行うことで、月ごとに必要な供給量が確保される仕組みとなっています。
1年前(追加オークション)
追加オークションの開催
追加オークションは、メインオークション後の想定需要の変化や供給力の変化を踏まえ、供給計画(第2年度)の需給バランス評価に基づき開催判断が行なわれます。
追加オークションは、メインオークション同様に、シングルプライスオークション方式で行われ、発電事業者等の応札容量(kW)、応札価格(円/kW)に基づく供給曲線と、広域機関が設定する需要曲線(買い入札曲線)の交点から約定価格を算出します。
実需給期間
リクワイアメントにもとづく供給力の提出
実需給期間では、各電源は、電源ごとに設けられたリクワイアメントにもとづいて供給力を提供しなければなりません。
安定電源などの主なリクワイアメント例
(ア)供給力の維持
- 実需給年度において、電源等の供給力を提供できる状態を維持すること
(イ)発電余力の卸電力取引所等への入札
- 実需給年度において、容量停止計画が提出されていない時間帯に小売電気事業者等が活用しない余力を卸電力取引所等に入札すること
(ウ)電気の供給指示への対応
- 実需給年度の容量停止計画を提出していない時間帯において、前日以降の需給バランス評価で需給ひっ迫のおそれがあると判断された場合に、属地一般送配電事業者からの電気の供給指示に応じて、ゲートクローズ以降の発電余力を供給力として提供すること
アセスメント(リクワイアメント達成状況の確認)
アセスメントは、各電源に設けられたリクワイアメントに対する達成状況の確認です。
各電源区分によって設けられたリクワイアメントに対して、それぞれアセスメントが行われ、達成条件を満たせていない場合は、経済的ペナルティが科せられます。
容量拠出金・容量確保契約金額
容量拠出金は、容量市場において供給力を確保するために、小売電気事業者および一般送配電事業者、配電事業者が拠出するものです。
2024年度以降に広域機関の会員である一般送配電事業者、配電事業者および小売電気事業者は、容量拠出金を広域機関に支払う必要があります。
容量拠出金を原資として、供給力を提供する容量提供事業者に対して、容量確保契約金額が支払われる仕組みとなっています。
まとめ
広域機関は、容量市場により、実需給期間の4年前に全国で必要な供給力を一括して確保します。
電源を落札した事業者は、約定結果公表後、広域機関と「容量確保契約書」を締結し、契約では、実需給期間における供給力提供の具体的な方法(以下、リクワイアメント)を取り決めます。
実需給期間では、各電源は、電源ごとに設けられたリクワイアメントにもとづいて供給力を提供する必要があります。
リクワイアメントを達成できない場合は、経済的なペナルティが科せられます。
容量市場の原資は、小売電気事業者、一般送配電事業者、配電事業者から、容量拠出金という形で徴収され、供給力を提供する発電事業者等に容量確保契約金額として支払われます。
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