広域機関は、発電事業者等と供給力提供の具体的な方法を取り決めます。これを「リクワイアメント」といいます。
リクワイアメントの達成状況は、事後に評価(アセスメント)され、評価結果によっては、ペナルティが課せられることがあることから、容量市場に参入した発電事業者等にとって、リクワイアメント・アセスメント・ペナルティを正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、容量市場のリクワイアメントのうち、発動電源の実効性テスト・発動指令への対応について、わかりやすく解説します。
リクワイアメント・アセスメント・ペナルティの全体像
広域機関は、発電事業者等とオークションで落札された応札単位毎の電源等と容量確保契約書を締結します。
容量確保契約では、実需給期間における供給力提供の具体的な方法(リクワイアメント)を取り決めます。
リクワイアメントは、電源区分、実需給期間の開始前後や需給状況によって異なり、リクワイアメント毎にアセスメント(リクワイアメント達成状況の確認)やリクワイアメント未達成時のペナルティが存在します。
広域機関は、リクワイアメントの達成状況をアセスメント(評価)し、達成状況に応じて容量提供事業者に容量確保契約金額を交付します。リクワイアメント未達成の場合は、経済的ペナルティとして、容量提供事業者へ交付する容量確保契約金額の減額や請求を行います。
リクワイアメントの一覧は、以下の表のとおりです。
また、オークション参加対象となる電源等の概要は以下の表のとおりです。変動電源は、自身での出力調整ができない自然変動電源のことで、単独で応札するものと組み合わせて(アグリゲート)応札するもので区分しています。
以降では、リクワイアメントのひとつひとつについて、詳しく見ていきましょう。
⑩実効性テスト(発動指令電源)
「⑩実効性テスト」のリクワイアメントは、「実効性テストにおいて容量確保契約容量以上の供給力を提供すること」とされています。
具体的には、容量提供事業者は、実需給年度の2年前の夏季(7~9月)または冬季(12~2月)に実効性テストを受け、容量確保契約容量以上の供給力を提供できることを示す必要があります。
実効性テスト時の期待容量が容量確保契約容量未満の場合、不足する容量を実効性テスト未達成量とし、未達成量に応じて経済的ペナルティが課されます。
対象となる電源は、発動指令電源です。
実効性テストのリクワイアメント
発動指令電源提供者は、実需給年度の2年前の夏季(7~9月)または冬季(12~2月)に実効性テストを受け、容量確保契約容量以上の供給力を提供できることを示す必要があります。
実効性テストを受けるためには、事前に電源等リストを提出し、オンライン機能(簡易指令システムを含む)を具備しておく必要があります。
実効性テストは、一般送配電事業者からの発動指令に基づき3時間継続して供給力を提供するものです。発動指令は、供給力提供開始の3時間前までに発出され、日時の指定はできません。
夏季および冬季それぞれ1回に限り、実効性テストの再実施を受けることができます。
一般送配電事業者からの発動指令に基づき、2日連続で実効性テストを実施した場合は、1日目、2日目、および2日間の平均値のいずれかを、発動指令電源提供者が選択の上、提出できます。
実効性テストのアセスメント
コマ毎にアセスメントを行い、実効性テスト時の期待容量が容量確保契約容量未満の場合、不足する容量を実効
性テスト未達成量とします。
ただし、以下の場合は容量確保契約容量の全量を実効性テスト未達成量とします
・ 広域機関がアセスメントを実施するために必要な情報を提出しなかった場合
・1電源等リストあたりの実効性テスト結果が1,000kWを下回った場合
実効性テストのペナルティ
実効性テスト未達成量については、市場退出したものとみなされ、約定価格の5%が経済的ペナルティとして科されます。
経済的ペナルティ(円) = 約定価格(円/kW) × 5% × 実効性テスト未達成量(kW)
なお、実効性テストの結果が1,000kWを下回った場合は、全量が市場退出したものとみなされます。
実際の参加にあたっては、オンライン機能の具備であったり、事業者コードや系統コードの取得といった手続き等もありますので、十分な準備期間が必要となります。
⑪発動指令への対応
「⑪発動指令への対応」のリクワイアメントは、「一般送配電事業者からの発動指令があった場合、適切に対応すること」とされています。
具体的には、容量提供事業者は、一般送配電事業者からの発動指令に応じて、容量確保契約容量以上の供給力を年間で最大12回かつ1回の発動につき3時間継続して提供することが必要です。
発動指令に応じ提供した供給力が容量確保契約容量に対して不足した場合、不足した容量をリクワイアメント未達成量とし、経済的ペナルティが科されます。
対象となる電源は、発動指令電源です。
発動指令電源の概要
2023年度までは、広域予備率が8%を下回る場合には、広域ブロック内で厳気象対応用である電源Ⅰ’を発動し、広域予備率を回復させていました。
2024年度以降は、電源Ⅰ’に代わって発動指令電源がその役割を担うことになります。
発動指令電源の運用方法は「第66回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料6(2021年10月14日)」において議論されており、各エリアで2グループに分け、各グループを輪番で発動する部分発動を基本とする運用が整理されました。
発動指令電源は、電源Ⅰ’と異なり、容量市場で全国一括確保、高需要時等に対応するために確保されます。
また、電源Ⅰ’の場合は一般送配電事業者が供給力を把握し、広域予備率に反映していましたが、発動指令電源では、指令を受けた事業者が計画を変更することで広域予備率にその供給力が反映されることになりますので、事業者による速やかな計画変更が求められることとなります。
発動指令電源の発動タイミング
発動指令電源は、広域予備率が8%未満になると想定される場合、一般送配電事業者から発動指令が発出されます。
下記表は、2024年度以降の需給ひっ迫時の追加供給力対策の一覧表です。
需給ひっ迫が想定される場合、緑色の項目から順番に実施されますので、「発動指令電源の発動」は最初に発動される対策となります。
発動指令への対応のリクワイアメント
発動指令電源提供者は、一般送配電事業者からの発動指令に応じて、容量確保契約容量以上の供給力を年間で最大12回かつ1回の発動につき3時間継続して提供することが必要です。
発動指令への応動は1日1回を限度とされています。
発動指令が発令された場合は、相対契約に基づく小売電気事業者への供給や卸電力市場等への応札を通じて適切に供給力を提供する必要があります。
上記リクワイアメント以上の発動指令がでる場合、例えば、年間13回以上の発動指令または1日2回以上の発動指令等を行う等がありますが、その場合はペナルティの対象外です。
発動指令への対応のアセスメントおよびペナルティ
発動指令に応じ提供した供給力が容量確保契約容量に対して不足した場合、不足した容量がリクワイアメント未達
成量となります。
リクワイアメント未達成量に対して、以下の経済的ペナルティが科されます。10%の加算ペナルティが科されるイメージです。
まとめ
「⑩実効性テスト」のリクワイアメントは、「実効性テストにおいて容量確保契約容量以上の供給力を提供すること」とされています。
具体的には、容量提供事業者は、実需給年度の2年前の夏季(7~9月)または冬季(12~2月)に実効性テストを受け、容量確保契約容量以上の供給力を提供できることを示す必要があります。
実効性テスト時の期待容量が容量確保契約容量未満の場合、不足する容量を実効性テスト未達成量とし、未達成量に応じて経済的ペナルティが課されます。
「⑪発動指令への対応」のリクワイアメントは、「一般送配電事業者からの発動指令があった場合、適切に対応すること」とされています。
具体的には、容量提供事業者は、一般送配電事業者からの発動指令に応じて、容量確保契約容量以上の供給力を年間で最大12回かつ1回の発動につき3時間継続して提供することが必要です。
2023年度までは、広域予備率が8%を下回る場合には、広域ブロック内で厳気象対応用である電源Ⅰ’を発動し、広域予備率を回復させていましたが、2024年度以降は、電源Ⅰ’に代わって発動指令電源がその役割を担うことになります。
発動指令電源の運用方法は「第66回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料6(2021年10月14日)」において議論されており、各エリアで2グループに分け、各グループを輪番で発動する部分発動を基本とする運用が整理されました。
また、電源Ⅰ’の場合は一般送配電事業者が供給力を把握し、広域予備率に反映していましたが、発動指令電源では、指令を受けた事業者が計画を変更することで広域予備率にその供給力が反映されることになりますので、事業者による速やかな計画変更が求められることとなります。
発動指令に応じ提供した供給力が容量確保契約容量に対して不足した場合、不足した容量をリクワイアメント未達成量とし、経済的ペナルティが科されます。
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