長期脱炭素電源オークションにより、落札事業者が収入を得る一方、その原資となる容量拠出金は、小売電気事業者および一般送配電事業者、配電事業者が拠出する必要があります。
ここでは、小売電気事業者による容量拠出金の負担についてわかりやすく解説します。
容量拠出金の全体像
容量拠出金とは、容量オークションによる供給力を供出した発電事業者に対して支払われる「容量確保契約金額」の原資として、小売電気事業者および一般送配電事業者、配電事業者が広域機関に支払うものです。
全ての小売電気事業者等(小売電気事業者、一般送配電事業者及び配電事業者)は、メインオークションと同様に、相対契約の有無等に関わらず、容量拠出金を負担する必要があります。
長期脱炭素電源オークションの容量拠出金は、制度適用期間開始となる2027年度以降に支払いが開始されます。
小売電気事業者の供給能力確保義務と容量市場の関係
第43回 電力・ガス基本政策小委員会(2021年12月27日)「今後の電力システムの新たな課題について中間取りまとめ」において、小売電気事業者が供給力確保に果たす役割が整理されています。
原則として、小売電気事業者は自ら kWh を確保することを通じて、供給能力確保義務を果たすことが必要であり、定常的に、供給能力の不足を発生させている場合や、短い時間であっても、極めて大きな供給能力の不足を発生させた場合は、「正当な理由」がない限り、供給能力確保義務違反として、供給能力確保命令が発出されうるとされています。
「正当な理由」は、以下の全てを満たす場合とされ、2021~2023年度において適用されます。
① 需給ひっ迫でない場合(広域予備率(※1)が3%を越える場合をいう。)
出典:第43回 電力・ガス基本政策小委員会(2021年12月27日)「今後の電力システムの新たな課題について中間取りまとめ
② スポット市場に入札したにもかかわらず、スポット市場において売り切れ(ブロック入札の売れ残りを控除した後の売残量が 0 となる場合をいう。)が生じたことにより、インバランスが発生する場合
③ スポット市場(※2)及び時間前市場において、小売電気事業者が市場調達を合理的に行おうとしているにもかかわらず(※3)、取引が成立しない場合
④ 当該小売電気事業者が、事後的にインバランス料金の支払いを行う場合
(※1)2021 年度は、当該インバランスを発生させた小売電気事業者のエリアの予備率
(※2)2021 年度に限る
(※3)市場において買い応札を行わない、常に市場の約定価格と比較して著しく安価な価格で買い入札を続ける等でない場合
小売電気事業者には、供給能力確保義務が課せられているため、供給力が不足している状況下では、スポット市場が高騰していても、それ以上の高値で入札するしか義務違反を回避する術はなかったと思います。
義務違反とみなされない「正当な理由」については、②「売残量が0となる場合」を正確に予測することが必要、③「市場の約定価格と比較して著しく安価な価格」については具体的な目安が明記されておらず、例えば、市場が200円/kWhとなった場合、いくらであれば著しく安価ではないと言えるのかわからない、といった状況から機能していなかったのではないでしょうか。
筆者は、これもスポット市場高騰の一因であったと考えています。
容量市場の創設後は、国全体で必要な供給力(kW価値)を、市場管理者である広域機関が容量市場を通じて一括確保することとなり、広域機関は、定款で規定された「容量拠出金」として、小売電気事業者からその費用を請求します。
よって、小売電気事業者にとって容量市場は、電気事業法上の供給能力確保義務を達成するための手段と位置づけられます。
2024年度からは、小売電気事業者は、容量拠出金を支払うことで、供給能力確保義務を果たしていることになります。
容量拠出金の算定
小売電気事業者、一般送配電事業者、配電事業者への配分方法
各事業者の容量拠出金の負担額は、以下のように算定します。
- 電源ごとの容量確保契約金額の総和から容量拠出金の請求総額を算出
- H3需要(ある月における毎日の最大電力(1時間平均)を上位から3日とり. 平均したもの)比率に応じて各エリアに容量拠出金負担額を配分
- エリア毎の事業者間の配分比率を利用して事業者毎に配分
各小売電気事業者への請求額の算定
各小売電気業者の毎月の配分比率は、前年度の年間(夏季/冬季)のピーク時の電力(kW)を基礎とし、対象実需給年度の各月の小売電気事業者のシェア変動を加味します。
当該配分比率に基づき各小売電気事業者の毎月の請求額を広域機関が決定します。
年間ピークとは「7~9月/12~2月の各月における最大需要発生時(1時間)における電力使用量を合計したもの(kW)の当該期間における比率」を指し、それぞれ容量拠出金1~6回目(4月~9月分)/7~12回目(10月~3月分)の請求額算定の基礎となります。
「最大需要発生時(1時間)」は、各エリア単位での最大需要発生時を指します。
容量拠出金の支払い・還元のスケジュール
容量拠出金の請求・支払いはメインオークションと同様に月毎に実施されます。
4月(N月)を対象月とする容量拠出金は、メインオークションの容量拠出金と合わせて7月(N+3月)に請求されます。
容量確保契約金額に対して経済的ペナルティや還付、および未回収が生じた場合には、一定の時期に精算を実施し、当該年度の容量確保契約金と容量拠出金のそれぞれの総額を一致させます。
小売電気事業者が費用支払に応じなかった場合は、広域機関の定款または業務規程に基づき、広域機関による当該会員の名称の公表や、当該会員に対する指導または勧告若しくは制裁が行われます。
それでもなお、改善が見られない場合は、必要に応じ、電気事業法に基づく経済産業大臣による供給能力確保その他必要な措置をとることの命令、あるいは、業務改善命令の発出が検討されます。
まとめ
容量拠出金とは、容量オークションによる供給力を供出した発電事業者に対して支払われる「容量確保契約金額」の原資として、小売電気事業者および一般送配電事業者、配電事業者が広域機関に支払うものです。
全ての小売電気事業者等(小売電気事業者、一般送配電事業者及び配電事業者)は、メインオークションと同様に、相対契約の有無等に関わらず、容量拠出金を負担する必要があり、長期脱炭素電源オークションの容量拠出金は、制度適用期間開始となる2027年度以降に支払いが開始されます。
容量市場の創設後は、国全体で必要な供給力(kW価値)を、市場管理者である広域機関が容量市場を通じて一括確保することとなり、広域機関は、定款で規定された「容量拠出金」として、小売電気事業者からその費用を請求します。
これにより、小売電気事業者にとって容量市場は、電気事業法上の供給能力確保義務を達成するための手段と位置づけられ、容量拠出金を支払うことで、供給能力確保義務を果たしていることとなります。
容量拠出金の請求・支払いはメインオークションと同様に月毎に実施されます。