【インバランス】補正インバランス料金の上限(C値)300円/kWhへの見直し―制度設計・監視専門会合での議論の変遷

2022年度から始まった新しいインバランス料金制度では、需給ひっ迫時にインバランス料金を上昇させる「補正インバランス料金」の仕組みが設けられています。この補正料金の上限を定めるC値は、制度開始以来200円/kWhの暫定値が継続されてきましたが、2024年9月から始まった制度設計・監視専門会合での議論を経て、2026年度以降は300円/kWhに見直すこととなりました。また、当初予定していた2026年4月からの施行は、JEPXの時間前市場システム更新の延期に伴い、2026年10月1日に変更されています。

ここでは、C値をめぐる議論の変遷と、今回の見直しの内容・背景についてわかりやすく解説します。

DENLOG

C値とは、需給ひっ迫時に適用される「補正インバランス料金(kW需給ひっ迫時補正インバランス料金)」の上限値(円/kWh)のことです。補正料金算定インデックス(広域予備率)が低下すればするほどインバランス料金が上昇し、C値がその上限を定めています。

目次

補正インバランス料金のC値・D値とは

2022年4月に導入された現行のインバランス料金制度では、インバランス料金の算定に「調整力の限界的なkWh価格(通常インバランス料金)」と「kW需給ひっ迫時補正インバランス料金」のいずれか高い方を採用する仕組みとなっています。

kW需給ひっ迫時の補正インバランス料金は、一般送配電事業者が調整に活用できる上げ余力の指標である「補正料金算定インデックス(広域予備率)」が低下するにつれて上昇するグラフ形状で定義されており、このグラフを規定するのがC値とD値です。

  • C値:補正インバランス料金の上限値(円/kWh)。広域予備率が0%のときに適用される最高料金。
  • D値:補正インバランス料金が立ち上がり始める広域予備率(%)の水準を決めるパラメータ。

この仕組みにより、需給ひっ迫時のインバランス料金を高くすることで、DR(デマンドレスポンス)や自家発の出力増といった追加的な供給力を引き出す効果や、需要家の節電効果が期待されています。

出典:電力・ガス取引監視等委員会「2022年度以降のインバランス料金制度について(中間とりまとめ)」

C値が200円/kWhに据え置かれてきた経緯

制度開始時(2022年)の設計思想

2022年4月の制度開始時点では、C値は暫定的に200円/kWhとして設定されました。これは、新制度への急激な移行が市場参加者に過大な負担を与えることを避けるための措置であり、2024年度からは600円/kWhに引き上げることが当初の計画として示されていました。

中間とりまとめによれば、C値は「緊急的に供給力を1kWh追加確保するコストとして、市場に出ていない供給力を新たに1kWh確保するために十分な価格」という考え方に基づき設定されるものです。制度開始時の600円/kWhという目標水準は、2018年度・2019年度の追加供給力公募(DR向け電源Ⅰ’)の結果を参考にしたものでした。

DENLOG

200円/kWhという暫定値は「当面の措置」として設定されたものであり、当初から将来的な引き上げが予定されていました。この点は、見直し議論の出発点として重要です。

600円/kWhへの引き上げ撤回(2023年11月)

2024年度からC値を600円/kWhに引き上げる予定でしたが、2023年11月21日に「2022年度以降のインバランス料金制度について(中間とりまとめ)」が改定され、2024年度も200円/kWhに据え置くことが決定されました。小売事業者への急激な影響を避けるとともに、制度移行後の市場の実態を踏まえた慎重な検討が必要と判断されたためです。

また、2025年度については「システム改修等の所要の準備期間が必要」として、2025年度も200円/kWhの適用を継続することとなりました。こうして、暫定措置は結果的に2022年度から2025年度まで4年間継続されることとなっています。

制度設計・監視専門会合での議論の変遷

C値・D値の本格的な見直し議論は、2024年9月から始まった制度設計・監視専門会合において集中的に行われました。第1回(2024年9月30日)から第10回(2025年6月27日)までの主な議論の流れは以下のとおりです。

  • 第1〜4回(2024年9月〜12月):各エリアのインバランス料金動向の確認、BGのインバランス発生状況や時間前市場の入札状況の分析、C値・D値の設定パターンごとの試算、累積価格閾値制度(セーフティネット)の具体案検討などが行われました。また、一般送配電事業者・発電事業者・小売電気事業者・DR事業者からのプレゼンも実施されました。
  • 第5回(2025年1月30日):BGへのヒアリング結果を踏まえ、事務局よりC値の具体的な設定案として①600円/kWh、②400円/kWh、③300円/kWh の3案が提示されました。委員からは段階的な引き上げを重視する意見や、2025年夏の状況を見た上で判断すべきとの意見など、多様な見解が示されました。
  • 第6〜7回(2025年2〜3月):需給ひっ迫時の保守的な発電計画の問題や、インバランス料金制度と容量市場との関係が整理されました。第7回(2025年3月31日)では、これまでの議論を踏まえ、事務局提案としてC値を2026年度から300円/kWh、D値を50円/kWhに見直すことが示されました。
  • 第8回(2025年4月25日):第7回の議論を踏まえた中間とりまとめの改定案が提示され、C値300円/kWh・D値50円/kWhへの見直しが改定案として確定しました。その後、4月26日から5月25日にかけてパブリックコメントが実施されました。
  • 第10回(2025年6月27日):パブリックコメントの結果(インバランス料金制度に関して3件の意見)が報告され、中間とりまとめの修正は不要と判断されました。これをもって、中間とりまとめの改定案が最終確定しました。

C値300円/kWh・D値50円/kWhとした根拠

C値300円/kWhという水準の根拠として、第7回会合の資料では以下の試算が示されています。容量市場の約定価格(2025〜2027年度の3カ年平均値253円)にD値の45円/kWhを加算すると約300円となること、また直近(2023年度)の追加供給力公募(kW公募)の試算値が300〜400円であることが参考とされています。

また、C値を引き上げる必要性については、需給ひっ迫時においても時間前市場での取引価格が十分上昇しておらず、同時同量インセンティブが不十分であること、そしてBGの行動変容を待っていては広域予備率の改善が遅れるという「因果性のジレンマ」があることが指摘されています。自然な行動変容を期待していては社会コストが増加するため、制度側からインセンティブを強化する必要があるとの判断です。

DENLOG

当初の600円/kWhから一転して200円/kWhの暫定据え置きが続いたため、「300円/kWh」という水準は、事業者への急激な影響を避けながらもシグナル機能を段階的に強化するという、バランスを重視した落とし所といえます。

D値の変更(45円/kWh → 50円/kWh)

D値については、広域予備率8%で実施される余力活用電源の追加起動のコストを反映して50円/kWhとする案が示されました。委員からは「定量的な実績に基づいた合理的な水準」として特に反対意見なく了承されています。

経済産業大臣への建議(2025年7月)

第10回会合での最終確定を受け、2025年7月に電力・ガス取引監視等委員会において中間とりまとめが報告され、託送料金等算定規則の改定等に係る建議が経済産業大臣に対して行われました。当初のスケジュールでは、この建議を経て2026年4月からの制度運用開始が予定されていました。

JEPXの時間前市場システム更新と施行時期の変更

インバランス料金制度の改定には、時間前市場のエリア別情報公表の実現とセットで進める計画となっており、JEPXのシステム更新が必要でした。ところが、2025年11月21日に開催された第15回 制度設計・監視専門会合において、JEPXの時間前市場システム更新について複数の事業者から対応困難との意見が示され、システム更新の延期が確認されました。これを受け、時間前市場のエリア別情報公表と合わせてインバランス料金制度の施行時期も2026年4月から2026年10月1日に変更されています。

DENLOG

施行時期の変更は、JEPXのシステム変更スケジュールに複数事業者から対応困難との意見が寄せられ、延期になったという実務的な理由によるものです。C値・D値の水準(300円/kWh・50円/kWh)や累積価格閾値制度などの制度内容自体に変更はありません。

C値見直しの変遷まとめ

時期C値D値主な決定・経緯
2022年4月〜2023年度200円/kWh(暫定)45円/kWh新制度導入時の暫定値。2024年度から600円/kWhへの引き上げを計画。
2024年度・2025年度200円/kWh(据え置き)45円/kWh2023年11月の中間とりまとめ改定により2024年度据え置き決定。2025年度もシステム改修等の準備期間を理由に継続。
2024年9月〜2025年6月200円/kWh(据え置き)45円/kWh第1〜10回 制度設計・監視専門会合で2026年度以降の水準を議論・確定。
2026年10月1日〜300円/kWh50円/kWh2025年7月に経済産業大臣への建議。第15回専門会合(2025年11月)でJEPXシステム更新延期に伴い、施行を2026年4月から10月1日に変更。
出典:電力・ガス取引監視等委員会「2022年度以降のインバランス料金制度について(中間とりまとめ)」

2026年10月以降の実務上の注意点

2026年10月1日以降、C値が300円/kWhに引き上げられることにより、需給ひっ迫時の補正インバランス料金の上限が現在の200円/kWhから100円/kWh引き上げられることになります。実務上、特に注意が必要な点は以下のとおりです。

  • インバランス料金のモニタリング強化:夏季・冬季の需給が厳しい時期には、補正料金算定インデックス(広域予備率)の動向をより一層注視することが求められます。C値の引き上げにより、ひっ迫時に発生するインバランス料金の最大水準が変わることを念頭に置いた対応が必要です。
  • DRや時間前市場の活用促進:高い補正インバランス料金を回避するインセンティブが強まることから、時間前市場でのポジション調整やDRの活用が一層重要となります。また、今回の施行と同時に時間前市場のエリア別情報公表も開始される予定であり、情報の活用方法についても事前に確認しておくことをお勧めします。

📌 ポイント
施行時期が2026年10月1日に変更されたことで、準備期間はやや延びましたが、対応の必要性は変わりません。需給管理の方針や社内ルールの見直しは余裕をもって進めておくことをお勧めします。

まとめ:補正インバランス料金C値の見直し

インバランス料金のC値をめぐる議論は、制度設計当初から数々の変遷をたどってきました。

2022年度の新制度導入時に暫定200円/kWhとして設定され、2024年度から600円/kWhへの引き上げが予定されていたC値は、2023年11月の中間とりまとめ改定により2024年度も200円/kWhに据え置かれ、2025年度も継続されました。その後、2024年9月から始まった制度設計・監視専門会合での集中的な議論を経て、2026年度以降は300円/kWhに見直すこととなり、2025年7月に経済産業大臣への建議が行われています。施行時期は、JEPXの時間前市場システム更新の延期に伴い、2026年10月1日に変更されています。

DENLOG

今回の見直しは「段階的な引き上げ」という性格が強く、当初計画の600円/kWhが無くなったわけではありません。今後も制度設計・監視専門会合等での議論の動向を注視していく必要があります。

※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。

目次