広域機関は、2020年度より、将来の供給力(kW)を確保する仕組みとして「容量市場」を開設しました。
ここでは、容量市場のメインオークションについて、わかりやすく解説します
参加対象および登録
オークションの対象
事業者
オークションには、実需給期間に供給力を提供できる「発電事業者」、DRなどの「アグリゲーター」が参加できます。
電源等
オークション参加対象となる電源等は、実需給年度に供給力を提供できる「安定電源」「変動電源」「発動指令電源」です。
DRは、アグリゲート等により期待容量1,000kW以上の供給力を提供できる場合、発動指令電源とし
て、容量市場に参加することができます。
自社電源(火力機)を持たない新電力であれば、再生可能エネルギー(変動電源)やDR(発動指令電源)等での参加が考えられます。
対象とならない電源等
<FIT電源>
・FIT電源は参加できません。
・実需給年度開始までにFIT買取期間が終了する電源は参加可能です
・バイオマス混焼(石炭混焼以外)の場合は、非FIT相当分について参加可能です
・バイオマス混焼(石炭混焼)の場合は、認定上のバイオマス比率をゼロにした場合のみ参加可能です
<FIP電源>
・FIP制度による買取期間が実需給年度と重なるFIP電源は、FIT電源に準拠して扱います。
<自家消費電源>
・専ら自家消費にのみ供される電源
※自家消費のために必要な容量を上回る発電容量があり、供給力が提供できる場合はオークション参加可能です
<自己託送電源>
・専ら自己託送および特定供給のみに供される電源
※運用および契約の形態によって登録が可能な場合あり
再生可能エネルギーに関して、FIT,FIP電源は、基本的に参加できませんが、卒FIT電源であれば、参加可能です
オークション応札単位
オークションに応札できる単位は、電源種別ごとにルールが定められています。
・安定電源・変動電源(単独)の応札単位は計量単位 ・変動電源(アグリゲート)は小規模変動電源リスト単位 ・発動指令電源は電源等リスト単位
オークションの参加登録
オークションまでに、参加登録を実施します。
参加登録には、「事業者情報」「電源等情報」「期待容量」の登録が必要となります。
事業者情報
参加登録申請者は、容量市場システムに事業者情報の登録の申込みを行います。
不備がなければ、登録完了通知を受領し、電源等情報登録へと進みます。
電源等情報
電源種別「安定電源」「変動電源(単独,アグリゲート)」「発動指令電源」によって、登録する情報が異なります。
左記は、発動指令電源の登録項目例になります。
期待容量
期待容量とは、「電源等情報として登録した設備容量のうち、実需給年度において供給区域の供給力として期待できる容量」を指します。
電源等情報の登録が完了した参加登録申請者は、期待容量を登録することができます
メインオークション
メインオークションへの応札
オークションへの参加登録に不備がなければ、メインオークション参加資格通知書が通知され、メインオークションへの応札が可能となります。
メインオークションへの応札は、1計量単位または1リスト単位ごとに、応札容量(kW)および応札価格(円/kW)を登録します。
需給曲線
メインオークションに用いる「需給曲線」は、広域機関が作成します。
まず始めに、点①の「目標調達量」と「指標価格(Net CONE)」を算出します。
点②の上限価格は、Net CONEの1.5倍に設定します。
次に、「停電コストと調達コストの和が最小となる点を結ぶ近似曲線」(トレードオフ曲線:黄色)を点①の「目標調達量」と「指標価格(Net CONE)」の交点を通るように描きます。
さらに、トレードオフ曲線を直線近似し、点③は点②の「上限価格」との交点として、点④は横軸との交点「調達価格ゼロにおける調達量」として算出します。
最後に点①~④を結び、需給曲線は完成です。
下記は、2022年度メインオークションにて実際に算出された需給曲線です。
需給曲線の作成方法は、需要曲線作成要領として、明確に定義されており、要領は広域機関にて公表されています。
目標調達量
目標調達量は、下記を踏まえて、全国で必要とする供給力を考慮した値とします。
- 年間最大需要(H3需要)に対応する供給力
- 景気変動等による需要変動(持続的需要変動)に対応する供給力
- 電源の計画外停止、出力変動電源の出力変化、気温等の変動に伴う需要変動(偶発的需給変動)に 対応する供給力
- 稀頻度リスク、厳気象に対応する供給力
- 計画停止を踏まえた追加設備量
指標価格(Net CONE)
指標価格(Net CONE)は、「新規電源の建設および維持・運営のための総コストをコスト評価期間で均等化したコスト」から「容量市場以外の収益」を差し引いたものです。
約定処理
供給曲線は、応札情報(応札価格、応札量)をもとに、応札価格の安い順に電源を並べて作成します。
FIT電源等は、容量市場に参加しませんが、供給曲線の積み上げには含めます。
全国の需要曲線と全国の供給曲線の交点を約定点とします。
市場分断
容量市場は、全国単一の市場として約定処理を行い、価格が安い電源から落札されるため、結果として落札電源が多いエリア、少ないエリアが生じます。
落札電源が少ないエリアでは、供給信頼度の基準が満たされていない場合があり、地域間連系線で他エリアの供給力の余力を追加して、なお供給力不足となるか評価します。
連系線制約の限界まで考慮しても供給信頼度が確保できない場合は、市場を分断し、供給力不足が解消するまで、市場分断したエリアでの供給力の追加約定処理を行います。
一方、供給力が充足となったエリアでは、全国の供給信頼度を満たす範囲で、応札価格が高い順に落札された電源を減少させます。
市場の分断が発生した場合は、エリアにより約定単価が異なることになります
電源等を追加したエリアにおいては、最後に追加した電源等の応札価格が分断されたエリアの約定価格(エリアプライス)となります。
容量市場のメインオークションは、シングルプライスオークションですので、応札した価格に関係なく、エリアの約定価格が適応されます。
約定結果(需給曲線と供給曲線)
対象実需給年度2024年度~2026年度の需給曲線と供給曲線は以下のとおりです。
年度が進むにつれ、需要曲線にはあまり変化は見られませんが、供給曲線の供給力は増加傾向にあることがわかります。
また、需給曲線と供給曲線の交点である約定価格は、過去3回のオークションで大きく異なりますが、価格の上下が激しく、価格を予測するのが難しい状況となっています。
全国エリア 対象実需給年度 約定価格 2024年度 14,137円/kW 2025年度 3,109円/kW 2026年度 5,178円/kW
容量市場の目的の一つとして、発電事業者の投資回収の予見性を高め、将来の供給力を確実に確保することがありますので、約定価格は、ある程度の安定が望ましいと思われます。
まとめ
容量市場のメインオークションには、実需給期間に供給力を提供できる発電事業者、DRなどのアグリゲーターが参加できます
参加対象となる電源等は、「安定電源」「変動電源」「発動指令電源」です。
メインオークションでは、広域機関が作成する「需給曲線」と応札電源を安い順に並べ替えた「供給曲線」の交点から約定価格が算出されます。
地域間連系線に制約により、市場を分断してオークションの約定処理をすることがあり、市場分断が発生した場合は、エリアにより約定単価が異なることになります。