【長期脱炭素電源オークション】制度導入の背景と目的

現行の容量市場は、落札電源の大部分が既設電源となっていますが、電源への新規投資を促進するべく、現行の容量市場の入札とは別に、脱炭素電源を対象とした入札を行い、容量収入を得られる期間を「1年間」ではなく「複数年間」とする方法により、巨額の初期投資に対し、長期的な収入の予見可能性を付与する入札制度が、長期脱炭素電源オークションとして、2023 年度から新たに創設されることとなりました。

ここでは、長期脱炭素電源オークションの制度導入の背景と目的について、わかりやすく解説します。

目次

制度導入の背景

新規電源投資の停滞

小売全面自由化(2016年4月1日)以前は、電源投資の回収は、総括原価方式による安定的な電気料金により行われ、巨額の電源投資に見合う長期的な投資回収予見性が確保されていたことから、長期的な将来の需要予測等をもとに、計画的に新規電源の開発が進められていました。

自由化以降は、電源投資の回収は、市場(スポット市場(卸電力)、容量市場、需給調整市場等)からの収入により賄われることとなり、市場の長期的な価格予見性が重要となりました。

出典:持続可能な電力システム構築小委員会(第7回)

しかし、スポット市場は、2019年までは価格低下傾向にあり、2020年~2022年にかけては価格が高騰するなど、非常に価格ボラティリティの高い市場であることが知られており、長期的な価格を予見するのは困難な状況です。

また、2020年度(実需給2024年度)から開始した容量市場では、4年後の「1年間」において容量収入を得る仕組みですが、過去の約定価格は年度ごとにかなりのバラつきがあり、やはり長期的な収入を予見するのは困難な状況です。

出典:電力広域的運営推進機関 容量市場かいせつスペシャルサイト

需給調整市場に至っては、一次調整力~二次調整力は2024年度からの調達開始であり、現時点で長期的な市場価格を予見するのは時期尚早だと思われます。

このように電力全面自由化以降は、電源投資の回収は市場(スポット市場、容量市場、需給調整市場等)から賄うとしていましたが、市場のボラティリティが高い状況下では、電源投資に対する長期的な投資回収予見性が低下し、多額の資金を必要とする電源への新規投資が停滞するとの懸念が生じていました。

一方で、既存電源は老朽化による休廃止の加速化が進み、供給力の減少がますます進んでいくと懸念されていました。

そこで、中長期的な電力の安定供給を確保するため、電源への新規投資を促していく仕組みの検討が開始されました。(2018年11月)

検討の過程

初期の検討は、「持続可能な電力システム構築小委員会」を中心に行われ、「第二次中間取りまとめ(2021年8月10日)」では、カーボンニュートラルと安定供給の両立に資する新規投資に限り、電源種混合の入札を実施し、落札案件の容量収入を得られる期間を複数年間とすることで、巨額の初期投資の回収に対し、長期的な収入の予見可能性を付与するという「長期脱炭素電源オークション」の元となる制度案が公表されました。

第13回持続可能な電力システム構築小委員会(2021年12月3日)および第42回電力・ガス基本政策小委委員会(2021年12月14日)において、本制度案は容量市場と密接な関係を有することから、容量市場の在り方について検討してきた「制度検討作業部会」に検討の場を移し、2023年度の導入を目途として、具体的な制度検討を進めていくこととなりました。

その後、「制度検討作業部会 第八次中間とりまとめ(2022年10月)」において、長期脱炭素オークションは、容量市場の一部として位置付けられること、電力広域的運営推進機関を運営主体とすると整理されました。

最終的には、電力広域的運営推進機関により、長期脱炭素電源オークションの制度詳細が取り纏められ、2023年度に初応札が実施されることとなりました。

目的

長期脱炭素電源オークションは、発電事業者に投資回収の予見可能性(特に初期投資額を含む固定費の回収の予見可能性)を確保することで脱炭素電源への新規投資を促すことにより、以下2つを同時に達成することを目指しています。

・中⾧期的な観点から安定供給上のリスクや価格高騰リスクを抑制
・2050年カーボンニュートラルを実現して、需要家に対して、脱炭素電源の供給力の価値提供

中長期の安定供給および価格高騰の抑制

現行の容量市場は、4年後の「1年間」に対して容量収入を得るため、長期的収入の予見が難しく、落札電源の大部分が既設電源となっています。

既設の老朽化火力が休廃止していく中、新規電源への投資は不可欠であり、長期脱炭素電源オークションにより新規電源の導入を促すことで中長期の安定供給を維持を目指しています。

また、十分な供給力が確保されることで、スポット市場の価格高騰が抑制されると期待されています。

脱炭素電源の提供

長期脱炭素電源オークションは、その名の通り、対象は脱炭素電源に限定されており、オークションにより導入された電源は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、需要家に脱炭素電源の供給力価値を提供します。

ただし、需給ひっ迫の観点から2023~2025年度は将来の脱炭素化に向けた対応を条件にLNG専焼火力も対象となります。

まとめ

長期脱炭素電源オークションは、電力自由化に伴う長期的な投資回収予見性の低下に伴い、電源への新規投資を促す仕組みとして制度化されました。

長期脱炭素電源オークションでは、発電事業者に投資回収の予見可能性を確保することで、脱炭素電源への新規投資を促し、中長期的な安定供給の維持やスポット価格高騰の抑制、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素電源の提供を目指しています。

DENLOG

長期脱炭素電源オークションは、火力発電所だけでなく、様々な電源種を対象としています。

系統用蓄電池も対象となっており、制度を利用した設備導入が加速しそうです。

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