長期脱炭素電源オークションは、容量市場における容量オークションの一つとして制度設計されています。4年後の「1年間」を対象とするメインオークションに対し、対象期間が「20年間」と長期契約であったり、入札電源が脱炭素電源に限定される等の特徴があります。
ここでは、容量市場の構成や長期脱炭素電源オークションの制度概要について、わかりやすく解説します。
容量市場の構成
容量市場は、広域機関がオークションを開催し、全国で将来必要な供給力を一括で確保する制度です。
容量市場では、4年後の1年間に対して供給力を確保する「メインオークション」に加え、メインオークションでは供給力が不足すると判断された場合に開催される「追加オークション」から構成されていました。
しかし、単年度のオークションでは、長期的な収入予見性が確保されず、電源投資が減少する懸念があったことから、2023年度より「長期脱炭素電源オークション」が新設されました。
長期脱炭素電源オークションでは、原則20年間にわたって容量市場収入が確保できることから、長期的な投資回収予見性が確保され、電源投資が促進すると期待されています。
メインオークションと長期脱炭素電源オークションの違い
従来のメインオークションと長期脱炭素電源オークションの違いは以下のとおりです。
まず、長期脱炭素電源オークションは、その名の通り、対象電源を脱炭素電源の新設・リプレースおよび既存火力の脱炭素化改修に制限しています。ただし、2023年~2025年度は、2050年までの脱炭素化ならびに落札後6年以内の運転開始を条件に、LNG火力の新設・リプレースも認められています。
新規電源投資を促進するため、対象期間は原則20年と長期間にわたり、オークション方式はマルチプライス方式が採用されています。
長期脱炭素電源オークション特有のリクワイアメントが存在したり、他市場収益の9割を広域機関に還付する必要があるなど、容量市場とは異なるルールが多く存在する点には注意が必要です。
供給力確保の仕組み
広域機関は、容量オークション(メインオークション、長期脱炭素電源オークション等)を開催し、将来必要な供給力を確保します。
発電事業者は、容量オークションの落札者として、落札容量に見合った供給力を提供し、その対価として容量確保契約金額を受け取ります。
小売電気事業者は、容量拠出金を広域機関に支払う義務が課せられ、これが容量確保計画金額の原資となります。容量拠出金は、容量市場の実需給が開始される2024年度から支払いが開始されます。
広域機関は、オークションの開催だけでなく、容量拠出金の集約や容量収入の管理も行います。
長期脱炭素電源オークションを利用することで、発電事業者は、原則20年にわたって容量収入を得ることができますが、その原資は小売電気事業者等の支払う容量拠出金で賄われ、最終的には消費者が負担することになります。
募集量の考え方
「制度検討作業部会第八次中間とりまとめ(2022年10月)」において、募集量の考え方について整理されており、内容は次のようなものです。
2050年カーボンニュートラルを達成するためには、今後の省エネや電化の結果次第ではあるが、約7割の化石電源を脱炭素電源に置き換えていくことや、現状存在する脱炭素電源のリプレース等を進めていく必要がある。 電源建設には一定のリードタイムが必要であることから、投資判断に残された期間は、残り20年程度となるため、仮に約1.2億kWの化石電源の全てを脱炭素電源に置き換えていくとすると、年平均で約 600万kW程度の導入が必要となる。一方で、足下では FIT 再エネが期待容量ベースで年間150万kW程度増加している。 こうした中で、必ずしも本制度措置のみで脱炭素電源の導入を行っていく訳ではないこと、今後の様々なイノベーションにより、より効率的に脱炭素電源を導入することが可能となる可能性もあり、制度開始当初から平均的な導入量を募集すると競争圧力が働かずに結果的に国民負担が増加する可能性があることを踏まえ、本制度措置の初期段階における募集量は、スモールスタートを基本とすることとし、具体的な募集量は、今後検討することとした。 「制度検討作業部会第八次中間とりまとめ(2022年10月)」一部抜粋
初期段階における募集量はスモールスタートを基本とすることから、2023年度長期脱炭素電源オークションにおける脱炭素電源の募集量は、400万kWと整理されました。
仮に約1.2億kWの化石電源を全て脱炭素電源に置き換えていくとすると、年平均で約600万kW程度の導入が必要となります。
また、LNG専焼火力の新設・リプレースに関する募集量は、2030年までに減少する可能性のある火力発電の供給力900万kWを考慮し、2023年~2025年度の3年間合計で600万kWと整理されました。
落札電源と約定価格の決定方法
長期脱炭素電源オークションでは、発電事業者等による電源の応札に対し、マルチプライス方式で落札電源と約定価格を決定します。
発電事業者等は、応札単位で応札容量と応札価格(円/kW/年)を決めて、オークションに応札します。
応札後、原則、電源種混合で応札価格の低い順に電源が落札され、募集量を満たす電源までが落札電源となります。マルチプライス方式では、落札電源の応札価格が約定価格となります。
容量市場のメインオークションは、シングルプライス方式ですが、長期脱炭素電源オークションでは、マルチプライス方式を採用しています。
これは、長期脱炭素電源オークションが様々な電源種の入札が行われ、初期投資に対し、長期的な収入の予見可能性を付与する目的を鑑み、入札事業者が投資回収に資する価格で応札し、その価格が落札価格となるマルチプライス・オークションが適切であると判断されたものです。<
供給力を提供する実需給期間
メインオークションでは4年後、追加オークションでは1年後の単年度を実需給期間と設定し、供給力確保を図る仕組みとしています。
長期脱炭素電源オークションでは、脱炭素化を図る新設・リプレースや改修が対象となるため、建設リードタイムも踏まえて供給力提供開始年度が決まりますので、落札案件ごとに提供開始年度が異なり、提供開始後から20年間の実需給期間が始まります。
なお、メインオークションでの4年後の必要確保量は、長期脱炭素電源オークションにより既に確保された電源を考慮して決定されます。
まとめ
容量市場は、4年後の1年間に対して供給力を確保する「メインオークション」に加え、メインオークションでは供給力が不足すると判断された場合に開催される「追加オークション」から構成されていました。
しかし、単年度のオークションでは、長期的な収入予見性が確保されず、電源投資が減少する懸念があったことから、2023年度より「長期脱炭素電源オークション」が新設されました。
長期脱炭素電源オークションは、その名の通り、対象電源を脱炭素電源の新設・リプレースおよび既存火力の脱炭素化改修に制限しています。
新規電源投資を促進するため、対象期間は原則20年と長期間にわたり、オークション方式はマルチプライス方式が採用されています。また、初期段階における募集量はスモールスタートを基本とすることから、2023年度長期脱炭素電源オークションにおける脱炭素電源の募集量は、400万kWと整理されました。
仮に約1.2億kWの化石電源を全て脱炭素電源に置き換えていくとすると、年平均で約600万kW程度の導入が必要となります。
また、LNG専焼火力の新設・リプレースに関する募集量は、2030年までに減少する可能性のある火力発電の供給力900万kWを考慮し、2023年~2025年度の3年間合計で600万kWと整理されました。
長期脱炭素電源オークションでは、脱炭素化を図る新設・リプレースや改修が対象となるため、建設リードタイムも踏まえて供給力提供開始年度が決まりますので、落札案件ごとに提供開始年度が異なり、提供開始後から20年間の実需給期間が始まります。