【JEPX】スポット価格の季節による変化

2020年末から続くJEPX価格高騰は、現在も続いており、落ち着く気配がありません。今回は、季節の変化によるスポット価格の傾向について解説します。

目次

JEPX(日本卸電力取引所)とは?

JEPXとはJapan Electric Power Exchangeの略で、日本卸電力取引所といい、日本における電力自由化の流れを受けて、2003年に設立されました。取引所では電力の売買を行うことができます。

卸市場という名の通り、会員登録した電力会社のみが取引可能で、発電事業者(主に旧一般電気事業者)や小売電気事業者が主な取引者となります。

スポット価格が変化する要因

JEPXの取引は、主に、スポット市場(一日前市場)、当日市場(時間前市場)に分かれており、ここでは、スポット市場について解説します。

DENLOG

電力も他の商品と同じように、需要と供給のバランスで価格が決まります。

2020年から続く価格高騰は、主に供給側の原因だと思います。

需要

需要が増加すると、スポット市場価格も高くなります。

需要は、気温と関連が強く、主に冷暖房のニーズにより大きく変動します。気温は季節により変化しますので、夏や冬は需要が増加する季節です。

また、企業の活動が休みになる休日は、比較的需要が穏やかになります。

一日の中でも、大きく需要は変化し、朝方から増加して日中~夜にかけて需要のピークを迎えます。需要の変化をグラフ化したものを需要カーブと呼び、季節によってカーブの形状は変化します。

供給力

供給力が減少するとスポット市場価格は高騰します。

供給力は発電機の数や能力で決まりますが、電力自由化の進展や脱炭素化等を背景に、近年、老朽化して採算性の悪くなった火力発電所の休廃止が進み、一方、発電機の建設はなかなか進んでいないことから、供給力は減少傾向にあります。

また、石油やLNGといった燃料価格の高騰もスポット価格に悪い影響を与え、現在のスポット市場の価格帯は主に火力発電所の燃料費用を反映したものと考えられます。

現在の価格高騰が収まるには、発電所の建設(または原子力発電所再稼働)や燃料価格の低下が必要となりますが、数年は暗い見通しといえるでしょう。

季節の要因による価格の変化とは?

需要

季節による需要の特徴

  • 夏:気温が高くなる午後1時~4時が需要のピーク (主に冷房需要)
  • 冬:暖房需要により朝方から夕方にかけて全体的に高い
  • 春秋:冷暖房需要がないため、比較的需要は低い

需要が高いほど、スポット市場価格も高くなるため、夏と冬は価格が高騰する傾向にあります。

また、時間帯としては、夏は夕方、冬は日中を通じて高騰する傾向にあります。

太陽光発電量

スポット市場価格には、太陽光FIT買取分が市場に「0.01円」の最低価格で入札されるため、太陽光発電量が多い時間帯はスポット市場価格が安くなる傾向があります。

夏の需要は太陽光と相性がバツグンです。

猛暑により需要が高くなるときは、晴れているので太陽光電力量も最大となり、ちょうど需要に合わせて発電量も増えていくイメージになります。

ただし、夕方から夜は太陽光発電がゼロとなるため、夏季のスポット市場価格は、夕方から夜にかけて高騰する傾向が見られます。

以下の図は、2021年8月26日の東京エリアの需給実績で、黄色の太陽光実績と水色の揚水発電に注目すると、日中帯は太陽光により揚水発電を使う必要はなく、夕方から太陽光の代わりに揚水発電を使い始めていることがわかります。

夕方まではフォローできませんが、夏季は太陽光と相性が良いことがわかると思います。

冬は太陽光との相性が最悪です。

雪や曇天により気温が低くなったときは、暖房需要により朝から夜まで需要が高くなるのですが、雪や曇天では太陽光は十分な発電量を供給することができないため、火力発電所で代わりに供給する必要があります。

冬季の雪や曇天といった荒天候時のスポット市場価格は、朝から夜まで高騰する傾向が見られます。

以下の図は、2022年2月10日の東京エリアの需給実績です。

この日の東京は雪となり、太陽光があまり発電しませんでした。

そのため、朝から夜まで揚水発電や他エリアからの融通(連系線)により何とか持ちこたえた状況だと読み取れます。

冬の需要は、雪や曇天の時に暖房需要で増加するものですから、太陽光は発電できず、相性が悪いといえます。

スポット市場価格は日中帯すべてで80円を記録しました。

供給力

発電機は、停止して定期点検をする必要がありますが、主に需要が低くなる春や秋を狙って行います。

このような時期を端境期と言い、端境期の供給力は減少する傾向にあります。

2022年3月16日の福島県沖地震では、東北地方を中心に多くの火力発電機がダメージを受け、停止することになりました。

もともと端境期ということもあり、定期点検中の発電機も多く、季節外れの寒さとなった3月22日から23日にかけて、供給力不足となり、あわや停電という状況に陥りました。

発電機の停止状況は発電情報公開システムで確認できます。

引用:発電情報公開システム https://hjks.jepx.or.jp/hjks/unit_status

東京エリアの需給バランス例

以下のグラフは、東京電力パワーグリッドのホームページからダウンロードした需要実績をエクセルで加工したものです。

2021年度のどの日付でも表示できるようにしていますので、季節による供給力と需要の移り変わりやスポット市場価格との関連性を感じてみてください。

引用:東京電力パワーグリッドエリア需給実績データ

まとめ:季節によるスポット価格の傾向

スポット市場価格は、需要と供給力のバランスで決まります。

需要は、夏と冬で高くなるので、スポット市場価格も同様に高くなる傾向が見られます。

供給力は、太陽光がポイントとなり、市場に「0.01円」の最低価格で入札されるため、太陽光発電量が多い時間帯はスポット市場価格は低下します。

夏は需要が高くなる時に太陽光発電量も増加するので、主に夕方を中心に価格は上昇しますが、冬は天候が悪い時に需要が高くなるため、朝から夜まで価格が上昇する傾向が見られます。

DENLOG

広域機関等から夏季と冬季の広域予備率が公表されていますが、ある一点の時間帯の予備率を示していますので、市場から電力を購入する場合は、価格の高騰する時間帯が長い冬季の方の影響が大きいのではないでしょうか。

市場価格を推測する際の参考にしてみてください。

※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。
目次