スポット市場の約定価格は、売り手の供給曲線と買い手の需要曲線の交点から求められます。これら供給曲線と需要曲線を描いたグラフを需給曲線(入札カーブ)と呼び、JEPXのホームページで毎日公表されています。
このコラムでは、需給曲線(入札カーブ)についてわかりやすく解説します。
スポット市場の価格が決定する仕組み
スポット市場は,1日を30分毎の48コマに分割し、それぞれのコマを個々の商品として取引されています。
全国は9エリア(北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州)に分けられており、入札者は、どのエリア、どの時間帯のコマで、電力の売買するのか選択することができます。
スポット市場は、ブラインド・シングルプライスオークション方式ですので、他の参加者の入札動向が開示されていない状況で、エリアと時間帯コマを選び、入札価格と量を決めて入札します。
JEPXでは、入札締め切り後に、すべての入札を売りと買いに分け、売り側は、入札価格の安い方から、買い側は、入札価格の高い方から順番に並べ、「売り」と「買い」の交わる点を約定価格とします。
入札者は入札した価格ではなく、交点で決まるひとつの約定価格で売買することになるため、シングルプライス方式と呼ばれています。
「売り」と「買い」の価格と量を、縦軸:入札価格(円/kWh)、横軸:電力量(MW)のグラフ上で表したグラフを需給曲線(入札カーブ)と呼びます。
需給曲線(入札カーブ)
需給曲線(入札カーブ)とは、JEPXスポット市場の約定価格を決定する「売り入札」と「買い入札」の価格と量を、縦軸:入札価格(円/kWh)、横軸:入札量(MW)の上に表したグラフのことです。
JEPXでは、2021年2月27日以降、スポット市場の需給曲線(入札カーブ)を当日中に公開しています。
これは、2021年1月のスポット価格高騰時に、公開されている情報が少ないとの入札者からのニーズにこたえ、公表を始めたものです。
以下のグラフは、システムプライス(9エリア平均)18:00-18:30コマの需給曲線(入札カーブ)です。
グラフの赤い線は供給曲線として、供給力の売り札を示しており、売り価格の安い方から入札量を積み上げています。
一方、赤い線は需要曲線として、需要の買い札を示しており、買い価格の高い方から入札量を積み上げています。
赤い供給曲線は、0円/kWhでの売り入札から始まり、入札量が30,000MWを超えたあたりで、価格が上昇をし始め、36,000MW付近で売り札が無くなっていることがわかります。
一方、青い需要曲線は、200円/kWh以上の買い入札が存在し、27,000MWを超えたあたりから価格が下がり始め、39,000MW付近で買い札が無くなっています。
この供給曲線と需要曲線の交点から約定価格が決定され、上記のグラフでは、約40円/kWh、35,000MW付近に交点が存在することがわかります。
また、このグラフでは、赤い供給曲線において、交点より右側の裕度がほとんど存在せず、これは供給力が不足気味であることを示しており、売り札は売り切れ直前であったことが読み取れます。
需給曲線(入札カーブ)は、48コマ分が作成・公表されており、エリア間の分断(約定価格が異なるエリアが発生)があった場合は、さらにそれぞれの分断した価格毎のカーブが公表されます。
ただし、単一エリアのみの単独価格となった場合は、特定の電源価格が推測できる可能性もあり、需給曲線は公表されない仕組みとなっています。
需給曲線(入札カーブ)が公開されるようになり、供給力と需要の関係が見えるようになったことから、約定価格の決定要因が以前よりは分析できるなったと思われます。
下記の記事では、スポット価格高騰時の需給曲線(入札カーブ)について紹介しています。
需給曲線(入札カーブ)の入手方法
需給曲線(入札カーブ)は、JEPXのホームページで公表されています。
JEPXのホームページにアクセスし、上部のタブから「取引情報」を選択するとスポット市場の各種情報にアクセスできます。取引情報のページの中段に「スポット市場における入札カーブ」の欄があり、ここで需給曲線(入札カーブ)が配布されています。
過去のカーブも公表されていますので、過去との比較を行うこともできます。
上記は、2022年11月5日時点で公表している入札カーブのページです。
一見、2022年8月~11月分のみ公表しているように見えますが、実は、ファイルのリンク先アドレスの内、年月を示す部分を書き換えることで過去のデータもダウンロードすることができます。
非常に不親切な表示形式ですが、そのうち改善されるかもしれません。
※リンク先アドレス:http://www.jepx.org/market/zip/curve_202211.zip 「202211」の部分を書き換えることで表示されていない年月のデータをダウンロードできます。 例えば、「202207」と書き換えると2022年7月分がダウンロードできます。
スポット価格が高騰したり、0.01円/kWhを付けたりした際は、是非、入札カーブをチェックしてみてください。買い手と売り手の入札動向を知る手がかりになると思います。
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