【JEPX】スポット市場:価格高騰の仕組み 需給曲線(入札カーブ)の見方

スポット市場の約定価格は、売り手の供給曲線と買い手の需要曲線の交点から求められます。これら供給曲線と需要曲線を描いたグラフを需給曲線(入札カーブ)と呼び、JEPXのホームページで毎日公表されています。

このコラムでは、需給曲線(入札カーブ)から読み取れる情報についてわかりやすく解説します。

目次

需給曲線(入札カーブ)とは

需給曲線(入札カーブ)とは、JEPXスポット市場の約定価格を決定する「売り入札」と「買い入札」の価格と量を、縦軸:入札価格(円/kWh)、横軸:入札量(MW)の上に表したグラフのことです。

以下のグラフは、システムプライス(9エリア平均)18:00-18:30コマの需給曲線(入札カーブ)です。

グラフの赤い線は供給曲線です。供給力の売り入札価格の安い方から入札量を積み上げています。

青い線は需要曲線です。

需要の買い入札価格の高い方から入札量を積み上げています。

両曲線の交点が約定価格・量になります。

需給曲線(入札カーブ)の分析例

需給曲線(入札カーブ)から読み取れる情報

以下は、2022年4月~10月の間でスポット価格が最高値(システムプライス100円/kWh)を付けた2022年6月29日(水)18:30~19:00のコマの需給曲線(入札カーブ)です。

2022年6月29日(水)JEPXスポット需給曲線(入札カーブ)

1.供給曲線と需要曲線の交点

まずは、供給曲線と需要曲線の交点に着眼します。

交点の縦軸と横軸を見れば、入札価格と入札量が読み取れ、上記のグラフでは、入札価格は、100円/kWhと非常に高い価格を付けていることがわかります。

交点における供給曲線(赤線)は垂直に立ち上がっており、これは、入札量がこれ以上増えない、つまり供給力の売り切れが発生していることを示します。

このように供給曲線の垂直立ち上がり部分に交点が存在する状況では、供給力の売り入札価格とは全く関係なく、買い入札価格により約定価格がどんどん上昇していくことになります。

DENLOG

供給曲線が垂直に立ち上がっている箇所に交点がある場合、買い手の心理状況でいくらでも価格が上昇していきます。

市場高騰が発生した場合は、このような需給曲線(入札カーブ)になっていることがほとんどです。

2.0.01円/kWhでの売り入札

スポット市場は、シングルプライスですので、確実に売る必要がある供給力については、0.01円/kWhにて売り入札を行い、実際の取引価格は約定価格によるといった入札行動が行われています。

例えば、大手電力会社の発電部門から小売部門に供給力を渡す際に、一定割合をスポット市場を経由させています。

これをグロスビディングと呼びますが、発電部門は、0.01円/kWhで売り入札を行い、小売部門は、999円/kWhで買い入札を行うことで、確実に約定させるといった行動をとる場合があります。

また、FIT電源の内、送配電事業者の買取分は、スポット市場に0.01円/kWhで売りに出されていますので、需要が低い休日に太陽光が大量に発電する時間帯は、0.01円/kWhになるケースが多くみられます。

下記グラフは、6月上旬の土曜日の需要曲線(入札カーブ)です。FIT太陽光による大量の0.01円/kWh売り入札により、供給曲線と需要曲線が0.01円/kWhの価格帯で交点を形成しています。

2022年6月4日(土)11:30-12:00の需要曲線(入札カーブ)

3.200円/kWh以上での買い入札

実際の取引は約定価格になりますので、確実に買う必要がある供給力については、非常に高額(例えば200円/kWh以上)な価格で入札されています。

しかし、市場の供給力が売り切れになり、多くの事業者が高額な入札を行うようになると、実際の約定価格も200円/kWhといった非常に高額な価格に高騰することがあります。

DENLOG

小売電気事業者には、供給力確保義務が課せられています。

供給力が売り切れになると、供給力確保義務を果たそうという心理から、本来の電力価格とは乖離した高い価格で入札し、どんどん市場が高騰していくのだと推察します。

制度面の影響が大きいのではないかと筆者は考えています。

需給曲線(入札カーブ)の比較分析

以下は、2022年4月~10月の間でスポット価格が最高値(システムプライス100円/kWh)となった2022年6月29日(水)の需給曲線(入札カーブ)と5日前の6月24日(金)同時間帯のグラフを重ねて比較したものです。

6月29日(水)は、季節外れの猛暑となり、需要が急増したことで、価格高騰が起こりました。

6月24日(金)と供給曲線がほぼ同じなことから、供給力は増加していないのに、需要だけが急増し、価格高騰が発生したことが読み取れます。

供給曲線の垂直立ち上がり部分では、供給力の売り切れが発生していますので、買い手の入札価格次第で約定価格はどんどん高騰していきますが、この例はまさに典型的な価格高騰のグラフだと言えます。

なお、需給曲線の取得方法は、別のコラムで解説していますので、そちらもご覧ください。

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まとめ

JEPXスポット市場の約定価格を決定する需給曲線(入札カーブ)は、JEPXホームページからダウンロードできます。

需給曲線(入札カーブ)上には、供給曲線と需要曲線が描かれており、その交点から約定価格・量を読み取ることができます。約定価格だけでなく、すべての入札者の入札価格と入札量がグラフ上に並べられていますので、買い手と売り手の入札動向についても情報を得ることができます。

また、複数日の同じ時間帯のグラフを比較すると、需要曲線と供給曲線がどのように変化したのかを観察することができ、買い手と売り手の入札動向の推移を知ることができます。

価格高騰が起きた際には、需給曲線(入札カーブ)をダウンロードし、需要曲線、供給曲線がどのような形状になっていたのか、確認してみてはいかがでしょうか。

※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。
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