連系線の運用容量を決める上限値は、「熱容量等」「同期安定性」「電圧安定性」「周波数維持」の制約要因により決定されます。ここでは、「電圧安定性」について説明します。
制約要因
連系線に限らず、電力系統に流せる電力の量(潮流)は、主に「熱容量等」「同期安定性」「電圧安定性」「周波数維持」の制約要因により決定されます。下図のように4つの制約要因すべてをクリアできる潮流の値が上限値であり、それが運用容量となります。
電圧安定性とは
「電圧安定性」とは、電力系統の電圧を安定的に維持する能力のことです。同期安定性と並んで理解が難しい制約要因かもしれません。
電力系統では、電圧を安定的に維持することは非常に重要で、連系線の潮流が電圧安定性の限度値を超えた状態で設備故障が発生すると、電圧が低下し、停電が発生する可能性があります。そのため、連系線では電圧を安定的に維持できるように電圧安定性の制約要因を設けています。
電力系統の電力と電圧の関係は、おもり(電力)と棒のたわみ(電圧)に例えることがあります。上図の棒のたわみは電圧の低下、おもりは送電電力、棒が固定されている壁は発電所等の電圧が一定に維持される点(発電所等)を表します。
右の図では、おもりが重すぎて棒が耐え切れずに折れてしまいました。これは電力を流しすぎて電圧が低下してしまい、停電となった状態を表したものです。
なお、電圧は、電圧調整装置(コンデンサ等)により調整することができ、例えば、コンデンサを系統に設置することは、柱で棒のたわみを助けるようなイメージになります。
電圧安定性が制約要因になっている連系線
電圧安定性が制約の決定要因となっている連系線は、以下の図で確認できます。日本にある10の連系線のうち、関西中国間連系線の関西向きのみ電圧安定性が決定要因になっています。
関西中国間連系線では、連系線が2ルートあり、片方のルートが連系断となった場合、電圧が安定的に維持できなくなる恐れがあるため、電圧安定性のシミュレーションを行い、電圧を安定的に維持できる潮流を求めて運用容量に設定しています。
まとめ:電圧安定性
「電圧安定性」とは、電力系統の電圧を安定的に維持する度合いのことです。
電力系統では、電圧を安定的に維持することは非常に重要で、連系線の潮流が電圧安定性の限度値を超えた状態で設備故障が発生すると、電圧が低下し、停電が発生する可能性があります。そのため、連系線では電圧を安定的に維持できるように電圧安定性の制約要因を設けています。
日本の連系線では、関西中国間連系線のみ電圧安定性が決定要因となっています。
「熱容量等」「同期安定性」「周波数維持」の制約要因については、下記の記事で紹介しています。
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