ローカル系統におけるノンファーム型接続は、2023年4月1日より受付開始となりました。基幹系統については、既に適用が開始されています。
ここでは、ローカル系統へのノンファーム型接続と混雑管理について、わかりやすく解説します。
ノンファーム型接続の適用系統・電源・制御対象
ノンファーム型接続の考え方は、電源の接続による系統混雑の発生個所(基幹系統・ローカル系統)により大きく区分されます。
基幹系統とは、それぞれのエリアで、上位2電圧階級の系統を指し、例えば、東京エリアでは、500kV、275kV系統がそれに該当します。
ローカル系統とは、基幹系統より下位の電圧階級の系統を指し、例えば、東京エリアでは、154kV、66kV系統の特別高圧がそれに該当します。
配電系統とは、高圧6.6kV・低圧の電圧階級を指し、ノンファーム型接続による系統接続はできませんが、系統混雑を解消するため、配電系統の電源(10kW以上)も出力制御の対象にはなります。
下記の図は、ノンファーム型接続の適用系統・電源・制御対象を体系的にまとめた図です。
「①適用系統」とは、ノンファーム型接続の考え方を適用する対象の系統を示しており、基幹系統混雑が想定される場合は、基幹系統を対象に、ローカル系統混雑が想定される場合は、ローカル系統を対象にすることを示しています。
「②適用電源」とは、ノンファーム型接続の考え方を適用する対象の電源を示しています。
「③制御対象」とは、混雑処理に伴う出力制御をどの系統の電源に適用するかを示しています。
「④制御方法」とは、系統容量を超過した場合に電源をどのようなルールに基づいて出力制御をするかを示しています。
基幹系統
2023年4月1日以降に接続検討を受け付けた電源については、受電電圧や空き容量の有無に関係なく、原則としてノンファーム型接続が適用されるようになりました。
「②適用電源」は、電源接続により基幹系統の混雑を生み出す電源が対象となります。
具体的には、基幹系統およびその下位に接続するローカル系統~配電系統に接続する電源が対象です。
「③制御対象」は、出力制御を行う対象電源のことで、現時点(2024年1月)では、基幹系統~ローカル系統電源を対象とし、配電系統(高圧以上)の電源についても必要に応じて拡大するとされています。
基幹系統の「④制御方法」は、「再給電方式」が採用され、再給電方式には、「一定の順序」という方式が適用されています。
再給電方式「調整電源の活用」および「一定の順序」については、以下のコラムで説明していますので、ご覧ください。
ローカル系統
2023年4月1日以降に接続検討を受け付けた電源については、受電電圧や空き容量の有無に関係なく、原則としてノンファーム型接続が適用されるようになり、ローカル系統にもノンファーム型接続が拡大されました。
「②適用電源」は、全電源(10kW未満の低圧を除く)が対象となります。
具体的には、ローカル系統およびその下位の配電系統に接続する電源(10kW以上)が対象です。
「③制御対象」は、同様にローカル系統および配電系統の電源(10kW以上)が対象です。
ローカル系統の「④制御方法」は、再給電方式(一定の順序)の出力制御順に基づき、一律に制御されます。詳しくは、次項で説明します。
ローカル系統の混雑管理
ローカル系統とは、上位2電圧および配電系統を除く特別高圧系統のことです。
ここでは、ローカル系統の混雑管理について説明します。
出力制御対象電源
ローカル系統および配電系統に接続する電源(10kW未満の低圧を除く)のうち、ノンファーム型電源は全て出力制御対象となります。
また、ファーム型電源については、調整電源および一般送配電事業者からオンラインでの調整ができない電源が出力制御対象となります。
バイオマス電源(専焼、地域資源(出力制御困難なものを除く))、自然変動電源(太陽光、風力)、地域資源バイオマス電源(出力制御困難なもの)および長期固定電源(水力・原子力・地熱)は、原則出力制御されません。
出力制御順
ローカル系統の混雑管理における電源の出力制御は、再給電方式(一定の順序)の出力制御順に基づく制御(一律制御の対象は計画値変更)に従い、以下の表の順序のとおり実施されます。
まずは、一般送配電事業者から制御可能である「①調整電源」をメリットオーダーに従い出力制御していきます。
それでも混雑が解消されない場合は、「②ノンファーム型接続の電源」を一律の割合で出力制御していきます。
さらに、「③ファーム型接続の一般送配電事業者からオンラインでの調整ができない電源」をメリットオーダーに従い出力制御します。
一般送配電事業者からオンラインでの調整ができない電源を活用しても混雑が解消できない場合は
- 「④ノンファーム型接続のバイオマス電源(専焼、地域資源(出力制御困難なものを除く) 」
- 「⑤ノンファーム型接続の自然変動電源(太陽光・風力)」
- 「⑥ノンファーム型接続の地域資源バイオマス電源(出力制御困難なもの)及び長期固定電源」
の順番で一律に出力制御していきます。
②ノンファーム型接続電源の出力制御フロー
ノンファーム型接続では、一般送配電事業者から出力制御スケジュール情報を受信できる機器を設置する必要があります。
上述の出力制御順において2番目に制御される「②ノンファーム型接続の電源」においては、この出力制御機器を利用して出力制御(PCSの運転スケジュール書き換え等)が実施されます。
ローカル系統混雑における出力制御は、最終計画提出(実需給の1時間前)より前の段階(計画段階)から行われます。
一般送配電事業者が混雑を予想し出力制御を行うタイミングは、以下に示す①~③の計3回です。
①翌日発電計画提出後
②実需給の1+α時間前※
③実需給の1時間前(発電計画確定の直後)
※ αは、システム処理時間や事業者の代替電源調達時間等を加味した上で一般送配電事業者において決定します
一般送配電事業者は、①~③時点で事業者から提出されている最新の発電計画および自然変動電源の出力予想や需要想定を基に、潮流想定を行い、混雑予想に基づき、出力制御スケジュール情報を送信することでノンファーム電源の出力制御を行います。
発電契約者は①および②における混雑予想を基にノンファーム電源の制御量を把握し、代替電源調達を行うとともに必要に応じて発電計画の修正を行います。
最終的な出力制御量は、③のタイミングにおいて、最終的な発電計画に基づき計算されるため、混雑が生じる場合は、インバランスとなる可能性があります。
ローカル系統の混雑管理におけるノンファーム型接続を対象とした出力制御では、基幹系統の再給電(一定の順序)による出力制御と異なり、発電計画の変更が必要となります。
出力制御により発電計画の修正および広域機関への計画提出が必要となりますので、それに対応できる体制を準備しておく必要がありそうです。
また、基幹系統とローカル系統が同時に混雑した場合は、下図に基づき、ローカル系統から先に混雑処理を行うことと整理されています。
出力制御機器
ノンファーム型接続にて電源を系統接続する際は、一般送配電事業者が発信する出力制御スケジュール情報をオンラインで取得できる装置を設置する必要があります。
一般送配電事業者に接続検討申し込みをする際に、「ノンファーム型接続の同意書」を提出する必要があり、その中にこのオンライン出力制御機器に関する記載があります。
- 系統混雑時の無補償での出力制御(オンライン制御)を前提に、系統連系開始までに出力制御に必要な機器を導入すること。
- 出力制御機器の導入や出力制御は貴社の求めに応じること。
66kV以上の電圧階級では、一般送配電事業者からの出力制御スケジュール情報を専用回線を介して受信し、発電機出力が自動制御されるシステムを構築する必要があります。
66kV未満の系統でも、出力制御スケジュール情報を受信する装置は必要ですが、発電機の制御は、手動制御も認める条件が定められています。
オンライン出力制御機器の設置は、全てのノンファーム型接続電源に求められますので、建設コストに考慮しておく必要があります。
系統情報の公開
ノンファーム型で接続する電源は、系統混雑による出力制御を想定し、事業収益性を適切に評価することが重要になります。
系統混雑の予見可能性を高める情報として、以下のような項目の情報公開が検討されています。
ローカル系統での系統混雑は、新規電源の接続により大きく左右されます。
特に、火力発電機のノンファーム型接続では、後からノンファームの太陽光や風力が接続しても、先に出力制御対象となりますので、それらも考慮しておく必要があります。
まとめ
新規電源の接続により、ローカル系統の系統容量を超過することが見込まれる場合は、ノンファーム型接続が適用されることになります。(2023年4月1日受付開始予定)
ローカル系統およびその下位に接続する配電系統に接続する電源(10kW以上)が対象です。
ローカル系統の電源に対する出力制御は、再給電方式(一定の順序)の出力制御順および制御方法に基づいて、出力制御されます。
ノンファーム型電源については、一般送配電事業者からの出力制御スケジュール情報により自動で出力制御が行われ、発電計画の変更も必要となります。
ローカル系統における混雑発生頻度が高くなる場合は、自動で発電計画の書き換えおよび広域機関への計画提出を行うシステムを導入する等の対応が必要になると思われます。
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