送電線や変圧器といった電力設備は、流せる最大の電力が決まっているので、一般送配電事業者は範囲内に収めるために調整電源の出力を調整することがあります。
再給電方式とは、この調整電源の出力調整について定めたルールのことです。ここでは、再給電方式(一定の順序)についてわかりやすく説明します。
再給電方式(一定の順序)の概要
再給電方式(調整電源の活用)
電力設備には流せる電気の上限(送電容量)が定められており、その値を超える恐れがあるときは、一般送配電事業者が電源の出力を制御しています。
電源の出力制御が必要となる状況を「系統混雑」と呼んでいます。
系統混雑を解消するため、「混雑系統」内の発電機の出力を下げますが、系統周波数を維持する(調整力による系統安定化業務:周波数制御)には、需要と発電のバランスを一致させる必要があり、下げた分だけ、「非混雑系統」の発電出力を上げる必要があります。
以下の図では、「基幹変電所B」の系統混雑箇所が発生しています。
系統混雑を解消するには、基幹変電所Bに接続する「①調整電源F」に下げ調整を行い、同時に基幹変電所Aに接続する「③調整電源A」に上げ調整を行います。
このようにして、一般送配電事業者が調整電源の出力を制御し、基幹系統の系統混雑を解消する方法のことを「再給電方式(調整電源の活用)」と呼びます。
調整電源とは、系統運用者である一般送配電事業者が調整力公募や需給調整市場で調達した電源のことです。
再給電方式(一定の順序)
一般送配電事業者が調達した、調達電源を出力制御する「再給電方式(調整電源の活用)」にて系統混雑を解消するためには、混雑系統内に十分な調達電源が存在する必要があります。
しかし、系統内に調整電源がなかったり、量が足りない場合は、再給電方式(調整電源の活用)による混雑解消はできません。
そこで、そのような系統においても、系統混雑が解消できるように、調整電源以外の電源も含めて一定の順序により出力制御する方式が考えられました。
これを「再給電方式(一定の順序)」と呼び、再給電方式(調整電源の活用)の対象となる電源(調整電源)に加え、 調整電源以外の電源も出力制御対象となります。
再給電方式(一定の順序)とは、出力制御する電源を、調整電源以外も対象にする点が、再給電方式(調整電源の活用)からの変更点です。
基幹系統の混雑管理
基幹系統とは、最上位電圧から2階級の電圧の系統、ただし供給区域の電圧が250kV未満のときは最上位電圧の系統のことです。
ここでは、基幹系統の混雑管理について説明します。
出力制御対象電源
2023年12月28日以降、再給電方式(一定の順序)が運用開始となり、基幹系統に混雑が発生した場合は、各一般送配電事業者の中給システムとデータ連携している基幹系統、ローカル系統に接続する電源等が、出力制御対象となります。(2023年12月以降必要に応じて配電系統(高圧以上)に拡大)
具体的には、調整電源と一般送配電事業者からオンラインで調整できない電源が出力制御対象となり、バイオマス電源(専焼、地域資源(出力制御困難なものを除く))、自然変動電源(太陽光、風力)、地域資源バイオマス電源(出力制御困難なもの)および長期固定電源(水力・原子力・地熱)は原則出力制御されないこととなります。
出力制御順
基幹系統の混雑管理における電源の出力制御順は、再給電方式(一定の順序)に従い、以下の表のとおり実施されます。
最初は「①調整電源」をメリットオーダーに従い出力制御します。
調整電源を活用しても系統混雑が解消できない場合は、次に、「②ノンファーム型接続の一般送配電事業者からオンラインでの調整ができない電源」を一律で出力制御します。
次に、「③ファーム型接続の一般送配電事業者からオンラインでの調整ができない電源」をメリットオーダーに従い出力制御します。
一般送配電事業者からオンラインでの調整ができない電源を活用しても混雑が解消できない場合は
- 「④ノンファーム型接続のバイオマス電源(専焼、地域資源(出力制御困難なものを除く) 」
- 「⑤ノンファーム型接続の自然変動電源(太陽光・風力)」
- 「⑥ノンファーム型接続の地域資源バイオマス電源(出力制御困難なもの)及び長期固定電源」
の順番で一律に出力制御します。
また、順番の最後にある「暫定ノンファーム型接続」とは、東北北部エリア電源接続案件募集プロセスで実施した、入札対象工事増強完了後は系統を制約なしに利用できるファーム型接続が、混雑時の出力制御を前提に、入札対象工事増強完了前に接続するスキームにて接続した電源のことです。
出力制御の運用方法
再給電方式(一定の順序)では、原則、実需給1時間前のゲートクローズ(GC)後に、一般送配電事業者が、基幹系統の混雑系統において「一定の順序」により出力制御することで混雑を解消します。
出力制御に伴い不足した電力は、非混雑系統の調整電源をメリットオーダーに従い、上げ調整することで電力の同時同量を確保します。
一般送配電事業者が一定の順序による出力制御にて混雑を解消させるため、発電契約者が発電計画を変更する必要はありません。
上の図は、再給電方式(一定の順序)のイメージ図です。
混在系統内の調整電源や非調整電源を一定の順序で出力抑制すると同時に、非混雑系統の調整電源をメリットオーダーに従い、上げ調整しています。
基幹系統では、発電契約者は、発電計画を変更する必要がありません。
再給電方式(一定の順序)による精算単価
再給電方式(一定の順序)により出力制御した場合、発電契約者は、発電計画は変更する必要がないため、電力は計画どおりに取引先(JEPX、相対取引等)に受け渡した形となります。
しかし、実際は、出力制御により出力が低下しているため、出力低下分は、一般送配電事業者から補給されることとなります。
その際、発電契約者は、一般送配電事業者に対して、補給を受けた分の電力費用を支払う必要があります。
以下は、出力制御により、一般送配電事業者から補給を受けた電力の精算単価を整理したものです。
ファーム型電源は、事前に契約等で定められた下げ調整対価等に基づき、限界費用ベースで精算すると整理されています。
ノンファーム型電源は、電源Ⅲや太陽光・風力等については、スポット市場価格にて精算すると整理されています。
再給電方式とノンファーム型接続との関係
送電線などの電力設備の空いている容量を活用し,新しい電源をつなぐ方法をノンファーム型接続といいます。
ノンファーム型接続は、系統の容量に空きがあったときにそれを活用するため、系統の容量に空きがなくなったときには、発電量の「出力制御」をおこなうことを前提に、接続契約が結ばれます。
そのため、同じ系統につながっている電源が一斉に最大出力となると、たちまち電力設備(送電線や変圧器等)は容量不足になり、系統混雑が発生し、発電の抑制が必要になります。
2021年1月13日からノンファーム型接続の適用が一部系統で開始され、2023年4月1日以降は、原則として全ての電源にノンファーム型接続が適用されることになり、電力設備の増強を行わずに接続する発電設備がますます増えてくると予想されます。
そのため、従来はあまり見られなかった系統混雑も発生する頻度が高くなると考えられています。
このような環境の変化や再生可能エネルギーの出力抑制を回避する目的もあり、一般送配電事業者による再給電方式(一定の順序)が検討され、適用が開始となりました。
ノンファーム型接続は,系統混雑時の出力制御を前提に系統増強なしで系統接続を行うという接続面の考え方であり,再給電方式はその接続面の考え方を前提とした,運用面(混雑処理)の考え方です。
再給電方式の開始時期
再給電方式(一定の順序)は、2023年12月28日から運用開始となりました。
2023年7月31日付けで、「基幹系統への再給電方式(一定の順序)の運用開始について」のお知らせが電力各社より発表されています。
送配電網協議会:基幹系統への再給電方式(一定の順序)の運用開始について
なお、基幹系統とは、最上位電圧から2階級の電圧の系統、ただし供給区域の電圧が250kV未満のときは最上位電圧の系統のことです。
再給電に代わる制度(ゾーン制、ノーダル制)
再給電方式では、混雑系統内の調整電源の出力を下げ、別の系統の調整電源の出力を上げる調整を一般送配電事業者が行います。
将来的には、市場の価格により発電事業者が自発的に出力を調整する市場主導型(ゾーン制、ノーダル制)に移行すべく、検討されています。
ゾーン制は、電力系統を複数のエリアに分けて、市場価格を決める方式です。
現在の日本では、9つのエリアに分けて翌日スポット市場が運営されており、既に9つのエリアのゾーン制が採用されていると言ってもよいのではないでしょうか。
将来的には、この9つのエリアがさらに細分化される方向に進むのではないかと推察されます。
また、ノーダル制は、簡略化して述べると、ゾーン制のエリアを変電所の母線単位(ノード)まで細分化した方式といったイメージであり、変電所の母線毎に市場価格が決定されるシステムとなります。
まとめ
再給電方式(一定の順序)とは、系統混雑を解消するための系統ルールです。
混雑内系統の調整電源や調整電源以外の出力を、一定の順序に従い、下げ調整し、別の系統の調整電源を上げ調整することで混雑を解消します。
2023年12月28日からは、再給電方式(一定の順序)が運用開始となりました。
将来的には、市場主導型(ゾーン制、ノーダル制)に移行すると言われており、発電事業者の方は制度の動向について注視していく必要があると思われます。
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