【インバランス】インバランス価格の算定方法

インバランスは、電力需給管理において欠かすことのできない重要な要素です。ここでは、インバランス価格の算定方法についてわかりやすく解説します。

インバランスとは

全ての瞬間において電力の需要と供給力は、常にほぼ一致している必要があります。供給力が不足すると周波数が上昇し、供給力が余剰になると周波数が上昇します。需給運用の世界では、周波数を一定に保つため、需要の変化に合わせて、24時間365日、供給力を調整し続けているのです。

出典:電力広域的運営推進機関 https://www.occto.or.jp/occto/about_occto/jukyu_chousei_kinou.html

2016年の小売り全面自由化以降、発電事業者と小売電気事業者は、それぞれの発電と需要について、30分毎の計画値を作成し、広域機関に提出するルール(30分計画時同時同量)が開始となりました。

出典:電力広域的運営推進機関 インバランス料金の当面の見直しについて

しかし、計画値と実際の発電や需要の間には必ず差が生じるため、電力会社(一般送配電事業者)は、事前に確保した供給力を用いて、不足インバランスや余剰インバランスがゼロになるように調整をしています。

この計画値からの需要や供給力のズレを「インバランス」と呼び、電力会社(一般送配電事業者)が調整に用いた電力量(kWh)は、別途、インバランス料金(円/kWh)として、インバランスを発生した発電事業者や小売電気事業者が精算することとなります。

出典:電力広域的運営推進機関 インバランス料金の当面の見直しについて
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インバランスというと、ペナルティのイメージを持つ方もいると思いますが、実際は、一般送配電事業者が計画値との差分の供給力を調整してくれる仕組みであり、ペナルティというよりは、スポット市場や時間前市場と並んだ、供給力確保の仕組みというイメージでしょうか。

インバランス価格

インバランス価格とは、一般送配電事業者がインバランスを調整したときの電力単価(円/kWh)のことです。インバランス価格の算定方法は、大きく以下の5つに分けることができます。

①通常のインバランス料金(限界的なkWh価格)
②需給ひっ迫時の補正インバランス料金
③太陽光や風力の抑制時のインバランス料金
④電源Ⅲの抑制時のインバランス料金
⑤ブラックアウト(エリア全域の大規模停電)発生時のインバランス料金

通常インバランス料金(調整力の限界的なkWh価格)

一般送配電事業者はインバランスを調整するため、事前に調整力として確保していた発電機の出力を上げ下げします。発電機出力が上げ下げにともない発電費用も増減し、この費用の増減を「調整力の限界的なkWh価格」としてインバランス価格に反映させています。(下図赤枠)

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通常のインバランス価格は、インバランスを調整するのに使用された電力の費用を反映しています。不足インバランスの場合は、調整のため供給してもらった電力に対する費用を支払い、余剰インバランスの場合は、引き取ってもらった電力に対する対価を受け取ります。

出典:電力・ガス取引監視等委員会事務局 インバランス料金制度等について

インバランス価格として算定される「限界的なkWh価格」とは、下図のようにメリットオーダーに従って調整コストの安い順に発電機の出力を調整した時、調整した最も高い価格をいいます。

出典:電力・ガス取引監視等委員会事務局 インバランス料金制度等について

需給ひっ迫時補正インバランス料金

需給ひっ迫時は、供給力が不足している状態ですので、調整に必要な発電費用も増加することが予想されます。そのため、通常のインバランス価格とは別の算定方法により「需給ひっ迫時補正インバランス料金」を算出しています。

下図のとおり、「通常のインバランス料金」と「需給ひっ迫時補正インバランス料金」の高い方がインバランス価格として採用される仕組みになっています。

出典:電力・ガス取引監視等委員会事務局 インバランス料金制度等について

「需給ひっ迫時の補正インバランス料金」は、下図のグラフで定義されています。

横軸は、「補正料金算定インデックス」といい、一般送配電事業者がインバランスの調整に活用できる電源の上げ余力であり、予備率のようなものです。

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補正料金算定インデックスは、広域機関の公表している広域予備率とは異なる値ですが、将来的には統一される予定です。

揚水の使用方法の考え方に違いがあるため、広域予備率の方が補正料金算定インデックスよりも厳しめの低い予備率になる傾向があると思われます。

※補正料金算定インデックスは、3時間で揚水を使い切る前提に対して、広域予備率は、先々の需給状況を踏まえた揚水配分を行っている。

出典:電力・ガス取引監視等委員会事務局 インバランス料金制度等について

需給ひっ迫時のインバランス価格は、一般送配電事業者が活用可能な「上げ余力」が減少するにつれ、インバランス価格も上昇する仕組みとすることにより、DRや自家発など追加的な供給力を引き出す効果や、需要家が節電する効果を期待しています。

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2022年度~2023年度は、暫定的措置として最高価格200円/kWhですが、2024年度からは600円/kWhになりますので、需給ひっ迫時のインバランス対策がより重要になってきます。

太陽光・風力および電源Ⅲの抑制時(系統供給力の余剰時)

太陽光や風力等の出力抑制が行われているコマで系統余剰となった場合については、インバランス料金は「0円/kWh」となります。

太陽光等の出力抑制には至らないまでも、優先給電ルールにより、一般送配電事業者からの指令によって、オフラインの火力等の出力を計画値から下げる場合があり、これを「電源Ⅲ抑制」といいます。

電源Ⅲはオフラインのため、調整力費用をタイムリーに把握するのが難しいので、一般送配電事業者が調整できる電源Ⅰ・Ⅱの下げ指令単価の最低値を採用します。通常のインバランス価格に近い考え方と言えます。

出典:電力・ガス取引監視等委員会事務局 インバランス料金制度等について

ブラックアウト(エリア全域の大規模停電)発生時のインバランス料金

「ブラックアウト」とは、大手電力会社の管轄する地域のすべてで停電が起こる現象(全域停電)をいいます。日本では、2018年9月6日(木)未明、北海道胆振東部を最大震度7の地震を起因として大量の発電所が停止し、北海道全域が停電しました。

ブラックアウト発生時のインバランス価格は、直前のスポット市場価格(各48コマ)が採用されます。

出典:電力・ガス取引監視等委員会事務局 インバランス料金制度等について

まとめ:インバランス価格

インバランス価格とは、一般送配電事業者がインバランスを調整したときの電力単価(円/kWh)のことです。インバランス価格の算定方法は、大きく以下の5つに分けることができます。

①通常のインバランス料金(限界的なkWh価格)
②需給ひっ迫時の補正インバランス料金
③太陽光や風力の抑制時のインバランス料金
④電源Ⅲの抑制時のインバランス料金
⑤ブラックアウト(エリア全域の大規模停電)発生時のインバランス料金

通常時は、①のインバランスの調整に活用した電力のkWh価格が反映されますが、需給ひっ迫時は、②の高額なインバランス価格に移行することがありますので、夏や冬の需給が厳しい時期は、エリア予備率に留意する必要があります。

筆者は、エリア予備率を確認するため、Twitterで各電力会社の予備率を配信しています。よろしければ参考にしてください。

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