電気は常に需要と供給を一致させる必要があり、需要の変化に合わせて需要と供給をバランスさせるために必要な電力を「調整力」といいます。
一般送配電事業者の調整力による系統安定化業務のうち、需給バランス調整(インバランスの解消)について説明します。
調整力
「調整力」は、広域機関の業務規程では、以下のように定義されています。
「調整力」とは、周波数制御、需給バランス調整その他の系統安定化業務に必要となる発電設備(揚水発電設備を含む。)、電力貯蔵装置、ディマンドリスポンスその他の電力需給を制御するシステムその他これに準ずるもの(ただし、流通設備は除く。)の能力をいう。
出典:電力広域的運営推進機関 業務規程 定義
「調整力」とは、一般送配電事業者が、周波数制御、需給バランス調整などの系統安定化業務を果たすのに必要となる供給力の調整能力とも言えるでしょう。
第6回 調整力等に関する委員会の資料6「調整力の定義及び調整力確保計画の対象について」に、その役割がわかりやすく解説されています。
一般送配電事業者は、周波数制御、需給バランス調整などの系統安定化業務を担務しており、系統安定化業務に用いる調整力は、2023年度までは一般公募で調達し、2024年度以降は、需給調整市場で調達します。
2023年度までの一般公募では、調達電源は、電源Ⅰ,Ⅱ,Ⅰ´の3種類に大きく分類され、それぞれ異なる役割を果たします。一般送配電事業者は、これらの調達した電源が具備する「調整力」を使って、系統安定化業務を行っています。
2024年度以降の調整力は、一般送配電事業者が需給調整市場を通じて調達します。
調整力は、発電機の周波数制御機能を踏まえた5種類(一次~三次②)の商品に分類され、それぞれ取引されます。
需給調整市場については、以下の記事を参考にしてください。
需給バランス調整(インバランスの解消)
一般送配電事業者は、エリアの需要と供給のバランスを一致させる責任を負っています。
計画値同時同量制度に基づき、発電事業者や小売電気事業者は、発電計画や需要計画を事前に提出しています。
しかし、「発電・需要計画」と「実際の発電・需要実績」の間には、どうしても差が生じてしまいます。
この差をインバランスと呼ぶのですが、一般送配電事業者は、このインバランスを解消する役目を果たしています。
一般送配電事業者は、不足インバランスに対しては、供給力を補給し、余剰インバランスに対しては、供給力を引き取ることで、需要と供給のバランスを一致させ、インバランスを解消しています。
このインバランスに対する供給力の調整が「需給バランス調整」であり、電力系統の安定運用には不可欠な要素です。
インバランスの解消に用いる調整力
需給バランス調整として、インバランスの解消に用いる供給力は、2023年度までは、主に調整力公募により調達した電源Ⅰ,Ⅱがその役目を果たしています。
2024年度以降は、需給調整市場から調達した調整力に置き換わります。
一般送配電事業者が調整を行う必要があるインバランスとは、下記の図で実需給断面(1時間前以降)にある「小売電気事業者による供給」と「エリア需要」の差分になります。
図では、小売電気事業者による供給が実際のエリア需要より不足しているため、供給力が足りない、つまり、不足インバランスが発生しています。
この場合、一般送配電事業者は、事前に確保していた上げ調整力により供給力を補給し、需要と発電のバランスを一致させます。
一般送配電事業者の中央給電指令所は、常に需要と発電のバランスを監視し、インバランスに対する供給力の調整を24時間、365日絶え間なく続けています。
このようにして電力の安定供給は守られています。
上げ調整力と下げ調整力
調整力の内訳は、上げ調整力と下げ調整力に分けることができます。
公募で調達した電源は、発電計画値に対して、出力増減が可能であり、その出力制御できる量を調整力として活用しています。
出力増加分を「上げ調整力」、出力減少分を「下げ調整力」と呼び、変化速度や変化幅等は、公募要領で詳細な条件が定められています。
- 上げ調整力
-
火力発電機などの発電余力(発電計画値から100%出力値までの余力)や揚水発電機(運転、停止中どちらでも)により出力を増加させ、調整力を生み出しています。
需給ひっ迫時などには、デマンドレスポンス(DR)を用いることもあります。
2023年度までは、電源Ⅰ,Ⅱのような主に調整力公募により調達し、2024年度からは、需給調整市場で調達します。
- 下げ調整力
-
火力発電機や揚水発電機の出力を減少させたり、揚水のポンプアップによる負荷増加により調整力を生み出しています。
2023年度までは、電源Ⅱ契約を締結した電源を活用し、2024年度からは、容量市場の余力活用契約を締結した電源を活用して、下げ調整力を調達します。
余力活用契約は、容量市場のリクワイアメントにて、調整機能が「有」と登録した電源が一般送配電事業者と締結するもので、調整機能とは、需給調整市場における商品の要件を満たす機能を指します。
このように、下げ調整力は、上げ調整力と違って、需給調整市場の取引商品として設定されておらず、容量市場の余力活用契約を締結した電源を活用することで調達しています。
調整力の内訳イメージ
下図は、調整力電源がどのように調整力を確保しているかを示したイメージ図です。
例えば、電源Bの調整力は、現在出力に対し、上げ調整力と下げ調整力を保有していますが、100%出力の電源Aは、これ以上出力上昇できないので、上げ調整力を保有していません。また、停止中の発電機も当然上げ調整力を保有していません。
需要の変動や発電機トラブル等への備えとして、一定の上げ調整力を確保しておく必要があり、そういったことも考慮して発電機の出力バランスは、調整されています。
太陽光の割合が大きくなってくると、この下げ調整力が不足するという問題も発生します。
- 上げ調整力
-
並列中の調整力電源の発電余力+停止中の調整力電源(水力、ガスタービンに限る)+ディマンドレスポンス(DR)
- 下げ調整力
-
調整力電源の発電計画値から最低出力を差し引いた値+揚水発電のポンプアップ(負荷)
まとめ:需給バランス調整
計画値同時同量制度に基づき、発電事業者や小売電気事業者は、発電計画や需要計画を事前に提出していますが、「発電・需要計画」と「実際の発電・需要実績」の間には、どうしても差が生じてしまいます。
この差をインバランスと呼ぶのですが、一般送配電事業者は、このインバランスを解消する役目を果たしています。
一般送配電事業者は、不足インバランスに対しては、供給力を補給し、余剰インバランスに対しては、供給力を引き取ることで、需要と供給のバランスを一致させ、インバランスを解消しています。
このインバランスに対する供給力の調整が「需給バランス調整」であり、電力系統の安定運用には不可欠な要素です。
一般送配電事業者が需給バランス調整に用いる調整力は、2022年時点では、調整力公募により調達されていますが、2024年度までには、需給調整市場から調達するように徐々に制度を変更していく予定です。
下記の記事では、需給調整市場について紹介しています。
※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。