【系統利用ルール】再給電方式(調整電源の活用)

送電線や変圧器といった電力設備は、流せる最大の電力が決まっているので、一般送配電事業者は範囲内に収めるために調整電源の出力を調整することがあります。

再給電方式(制御電源の活用)とは、一般送配電事業者が調整電源の出力調整により、基幹系統の混雑を解消するルールのことです。ここでは、再給電方式(調整電源の活用)についてわかりやすく説明します。

目次

再給電方式(調整電源の活用)の概要

電力設備には流せる電気の上限(送電容量)が定められており、その値を超える恐れがあるときは、一般送配電事業者が電源の出力を制御しています。

電源の出力制御が必要となる状況を「系統混雑」と呼んでいます。

系統混雑を解消するため、「混雑系統」内の発電機の出力を下げますが、系統周波数を維持する(調整力による系統安定化業務:周波数制御)には、需要と発電のバランスを一致させる必要があり、下げた分だけ、「非混雑系統」の発電出力を上げる必要があります。

出典:電力・ガス取引監視等委員会 第55回 制度設計専門会合 資料3

以下の図では、「基幹変電所B」の系統混雑箇所が発生しています。

系統混雑を解消するには、基幹変電所Bに接続する「①調整電源F」に下げ調整を行い、同時に基幹変電所Aに接続する「③調整電源A」に上げ調整を行います。

地内系統の混雑管理に関する勉強会 最終報告 2021年3月1日 
DENLOG

このようにして、一般送配電事業者が調整電源の出力を制御し、基幹系統の系統混雑を解消する方法のことを「再給電方式(調整電源の活用)」と呼びます。

調整電源とは、系統運用者である一般送配電事業者が調整力公募や需給調整市場で調達した電源のことです。

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一般送配電事業者は、この調整電源の出力を制御することができます。

再給電方式では、混雑系統内の最もコスト(増分単価)の高い電源の出力を抑制し、別の系統の中で最もコストの安い電源の出力を上昇させることで、需給コストへの影響を最小限に抑えています。

このような、運転コスト(燃料費,起動費等)の低い電源から順番に稼働することにより電源全体の運転コストを最小化することをメリットオーダーと呼びます。

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一般送配電事業者が制御できる「調整電源」のみを制御する再給電方式(調整電源の活用)に対して、一般送配電事業者とは関係ない「非調整電源」まで含めて制御する再給電方式(一定の順序)が2023年12月28日から開始されました。

再給電方式とノンファーム型接続との関係

送電線などの電力設備の空いている容量を活用し,新しい電源をつなぐ方法をノンファーム型接続といいます。

ノンファーム型接続は、系統の容量に空きがあったときにそれを活用するため、系統の容量に空きがなくなったときには、発電量の「出力制御」をおこなうことを前提に、接続契約が結ばれます。

そのため、同じ系統につながっている電源が一斉に最大出力となると、たちまち電力設備(送電線や変圧器等)は容量不足になり、系統混雑が発生し、発電の抑制が必要になります。

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2021年1月13日からノンファーム型接続の適用が開始されたことから、今後は、電力設備の増強を行わずに接続する発電設備が増えてくると予想されます。

そのため、従来はあまり見られなかった系統混雑も発生する頻度が高くなると考えられています。

このような環境の変化や再生可能エネルギーの出力抑制を回避する目的もあり、一般送配電事業者による再給電方式の採用が決定されました。

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ノンファーム型接続は,系統混雑時の出力制御を前提に系統増強なしで系統接続を行うという接続面の考え方であり,再給電方式はその接続面の考え方を前提とした,運用面(混雑処理)の考え方です。

再給電方式の開始時期

国の審議会(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第37回))において、電源の制御環境が整っている調整電源を活用し、メリットオーダーに従い出力制御する再給電方式(調整電源の活用)を開始することが整理され、2022年12月21日より運用開始されています。

出典:電力広域的運営推進機関 2023年12月再給電方式(一定の順序)の導入について

以前は、ノンファーム型接続で系統に連系した新規電源のみで出力制御する予定でしたが、ノンファーム型接続には再エネが多く含まれることが予想され、再エネの電源価値を活用しきれない課題があったことから、調整電源での出力抑制という再給電方式(調整電源の活用)に本審議会で方針を変更したものです。

なお、調整電源の活用では、再給電方式の対象は、基幹系統(最上位電圧から2階級の電圧の系統、ただし供給区域の電圧が250kV未満のときは最上位電圧の系統)でしたが、非調整電源を含めた再給電方式(一定の順序)が2023年12月28日から運用開始となっています。

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再給電に代わる制度(ゾーン制、ノーダル制)

再給電方式では、混雑系統内の調整電源の出力を下げ、別の系統の調整電源の出力を上げる調整を一般送配電事業者が行います。

将来的には、市場の価格により発電事業者が自発的に出力を調整する市場主導型(ゾーン制、ノーダル制)に移行すべく、検討されています。

ゾーン制は、電力系統を複数のエリアに分けて、市場価格を決める方式です。

現在の日本では、9つのエリアに分けて翌日スポット市場が運営されており、既に9つのエリアのゾーン制が採用されていると言ってもよいのではないでしょうか。

将来的には、この9つのエリアがさらに細分化される方向に進むのではないかと推察されます。

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また、ノーダル制は、簡略化して述べると、ゾーン制のエリアを変電所の母線単位まで細分化した方式といったイメージであり、変電所の母線毎に市場価格が決定されるシステムとなります。

まとめ

再給電方式とは、系統混雑を解消するための系統ルールです。混雑内系統の調整電源の出力を下げ、別の系統の調整電源の出力を上げることで混雑を解消します。

ノンファーム型接続により、多くの発電設備が系統に接続され、それに伴い系統混雑の頻度は増加すると予想されます。系統混雑により、ノンファームで接続した再エネ発電が出力抑制されるのを避ける目的もあり、系統混雑を解消するためのルールとして再給電方式(調整電源の活用)が整理されました。

さらに、2023年12月28日から、調整電源以外の発電機も出力制御の対象とする「再給電方式(一定の順序)」が運用開始になりました。

将来的には、市場主導型(ゾーン制、ノーダル制)に移行すると言われています。

発電事業者の方は、本制度の動向について注視していく必要があると思われます。

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